戻る <<戻る | 進む>>
第1698話 有閑工房1 投稿日: 03/10/31 14:17 ID:Uj2DkAfZ
『夜明け前』

「兄上、こんな夜遅くまで何をしている?」
「アーリア、まだ起きていたのか。」
「目が醒めた、醒めたら灯りがついている、それで来てみただけだ。」
「そうか。…見てみるか?」
「うん。」
 そう言ってゲルマッハ君は書いていたレポートをアーリアちゃんに渡すと、温かい
ココアを作ってそっとアーリアちゃんの傍に置きます。
 それをアーリアちゃんはにっこり笑って受け取りますが、ゲルマッハ君の書きかけの
レポートを読み進むうちに段々顔つきが険しくなります。
「兄上、この内容は…」
「見てのとおり、我が家の過去を見直している所だ。」
「しかし、良いのか?ナッチ叔父や紫苑の家の事まで書いてあるぞ?」
「良い機会ではないかと思ってな。」
 あくまでゲルマッハ君は物静かです。逆にその平静さがアーリアちゃんには信じがたい
事です。それだけ書いてある内容が衝撃的だったのですが。
「いや、それにしても…」
「アーリア、周りの家々の人間、アメリーたち、そして紫苑が言っていることが我が家
の全てじゃない。祖父プロイセンが背負わされた借金で極貧の生活を送っていた我が家
をナッチ叔父が建て直したのは厳然たる事実だ。」
「しかしそれによって周囲にばら撒いた敵意や火種は…」
「アーリア、それはお互い様だ。強いて言うなら負ける事が諸悪の根源だったんだよ。
負けてしまえば相手の落ち度まで背負わされ、その上徹底して弱い立場に立たされる。
EU地区の古いしきたりはそう大きくは変わっていないという事だ。」
「確かに兄上の言う事にも一理ある。しかし紫苑の事は…」
「ナッチ叔父は紫苑の家から全ての財産を巻き上げようとしたわけではない。やっていた
のはせいぜいいじめだ。その頃紫苑家の面々の中にマル教にかぶれて好き放題やっていた
連中が多くいた。主にそのような輩を隔離する目的で、次いで紫苑家の連中を家の敷地
から追い出す目的であのような措置を取ったのだ。」
「それにしても・・・私にはもっと他に手段があったように思うが?」
 ゲルマッハ君はそんなアーリアちゃんを優しい瞳で眺めています。しかし口調は反論を
許さないほど厳然としたものでした。
「時間などなかったんだよアーリア。血の一滴も出ないくらい大借金を背負わされ、近所中
から村八分にされていた。誰もが投げ遣りになっていた。そんな中バラバラになりそうな
我が家をナッチ叔父が一つにしたのは事実だ。他に方法があったにしても、果たして周りが
それを許してくれるとは限らない。そういうものなのだよ。」
 アーリアちゃんは反論できません。ゲルマッハ君も少し言い過ぎたかなと思い、デスクライト
を消して立ち上がります。
「心配かけて済まなかった。もう寝るとしよう。」
「いや、…別に私は心配していたわけではない。」
「そうか。ではそういう事にしておこうか。」
 ゲルマッハ君は悪戯っぽくそう言い、ゲルマッハ君の言葉にむっとした上釈然としない
アーリアちゃんを伴って部屋を出ます。
 さて、ゲルマッハ君の努力が日の目を見るのはいつなのでしょうか。

「兄上、繰り返すようだが別に心配をしていたわけではないぞ。」
「わかったわかった。(^^)」

おしまい

解説 有閑工房解説汁 投稿日: 03/10/31 14:19 ID:Uj2DkAfZ
解説・諦観・千夜一夜
※ さて今回はドイツの歴史見直し運動どすえ。ウリもつい最近知ったのだけど、ドイツでは
ホロコーストに異議を唱えると投獄されます。また、左翼運動が西側でも戦中戦後とも激烈な
一帯でした。ドイツが戦後ホロコーストを計画的に実行したとして一方的に悪名を被りました
が、どうも嫌ってはいても計画的なものではなかったようです。これは戦後ユダヤ人が捏造し、
謝罪と賠償を半永久的に求める為の口実にしたのが…て、どこかで聞いた話ですな(w。罪悪
感と負い目を持たせるのは、被害者面して利権をむさぼる為の格好の餌食になるということで
すね。安心しましょう、そういう目に遭っているのはニホンちゃんだけではありません。
…安心できんか。

※ とはいえ紫苑ちゃんとブラジャーズの大きな違いは国民の質の優劣が決定的な所。それだけ
に紫苑ちゃんが眼の敵にされるところでもあるんですが、アラブ諸国には嫌われる別の理由があ
ります。ま、それは後日という事で、取り敢えずぶぶ漬けなんぞドゾ。
※ 出汁一覧
↓見直し論議についてこんな記事が出回っています。
↓玄人向け:木村愛二の憎まれ愚痴。濃いいです。
ttp://www.jca.apc.org/~altmedka/index.html
 ↓その内ホロコースト関連リンク。
 ttp://www.jca.apc.org/~altmedka/gas-linkall.html

↓素人向け:maaと愉快な仲間達 内世界史コンテンツはお薦め。随分偏って
ますが(w
ttp://maa.main.jp/
 ↓ここから『???お姉さんの居残り授業』を長いこと電波を浴びながらROMしてください。
 どこにもリンクがないので貼るわけにもいかず…つか、おもろいから読んで見てね。
 ttp://maa.main.jp/ruri/gulfwar_02.html

ベースのネタはこちら。新聞記事は消滅しちゃいました…。
↓ここのメルマガの地域レポートの欧州欄より
ttp://www.melma.com/mag/42/m00001142/a00000402.html
●被害者か、加害者か、「戦後追放記念館」の建設で揺れる(ドイツ)
●歴史見直し機運高まる
 第2次世界大戦後に中・東欧諸国から集団追放されたドイツ系住民らが計画し
ている「戦後追放記念館」の建設の是非と立地をめぐって、ドイツだけでなくチ
ェコやポーランドを巻き込んだ論争が繰り広げられている。“被害者”の側面に
焦点を当てた記念館建設には、隣国からの反発が強い。(ベルリン・豊田 剛)

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: