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第1734話
李予愚 ◆yfJP8CTXXs
投稿日: 04/01/03 01:09 ID:Jd2PGD6z
「眠る記憶(1/4)」
パン、と音がして、私の頬をBB弾が掠めた。
「ねえ、チューゴ。私に石を投げたでしょ」
振り向くと、ニホンちゃん。
その手にはエアガンが向けられていて、銃口はあたしに向いている。
「謝罪と賠償を要求するわ」
「ちょっと、ニホンちゃん。どうしたの?バカンコみたいなこと言って。それにチューゴ
って何の冗談……」
「人に石を投げた上、カンコをバカ扱い?失礼にもほどがあるわ」
「ちょっと待ってよ、ねえ」
私には何がなんだかわからない。
「そう……謝罪してもらえないなら……私は……私はあなたを撃つしかない」
彼女はぎゅっと目を瞑り、エアガンの引き金を引いた。
「ひっ」
弾は私の髪留めを破壊した。なんだかよくわからないけれど、彼女は本気らしい。
あたしは後ろを向き、そして全速力で逃げ出した。
「眠る記憶(2/4)」
ニホンちゃんはエアガンを撃ちつつ、あたしを追ってくる。
あたしは逃げるけど、彼女の足は信じられないほど速くて。
どれくらい走ったろう。とうとう追いつかれてしまった。
「はぁはぁ……やっと、追いついたわよ。さあ、謝って……」
息を切らせながら彼女が言う。
でも、あたしは首を振る。
「ダメだよ……」
悪いことをして謝らないような馬鹿じゃないけど、わけもわからず謝るのは良くない。
自分にとっても相手にとっても失礼だ。
だから。
「あたし、やってないことは謝れない」
「お願いだから……お願いだから謝ってよ、チューゴ。でないと、私……」
それっきり、彼女は何も言わなかった。
かわりに、ぽとりと音がした。
あたしは顔を上げた。
「眠る記憶(3/4)」
普通、人に銃口を向けるときは、その人は怒っているのだと思う。
あるいは残酷な人間ならば冷たく笑うのかもしれない。
でも、ニホンちゃんはそのどちらでもなかった。
彼女の頬には涙が伝っていた。
唇をかんで、必死に泣き出すのをこらえていた。
「あなたが謝ってくれなかったら……私はもうあなたを無視するよ」
彼女の瞳が、悲しそうに私を見つめた―
気がつくと、布団の中だった。
ちゅんちゅんすずめが鳴いてるのは、朝が来た証拠だ。
(夢……だったのね)
あたしはほっとため息をついて起き上がる。
「おはよー!」
あたしが挨拶すると、
「おはよう、タイワンちゃん」
ニホンちゃんの柔らかな挨拶が返ってくる。
あたしはなんか嬉しくて、ニホンちゃんに抱きついた。
「どうしたの、タイワンちゃん。いいことでもあった?」
「ううん。別に」
ニホンちゃんのシャンプーの香りがあたしの鼻をくすぐる。
「ねえ、あたしたちはいつまでも友達だよね」
「うん。友達だよ」
「えへへ」
「こら、タイワン。あんまりニホンにべたべたするな」
アーリアが私の頭をこづく。
いつもの朝。
あたしはそんな普通の朝が大好き。
解説
李予愚 ◆yfJP8CTXXs
投稿日: 04/01/03 01:23 ID:Jd2PGD6z
ネタは中日戦争です。
しなくてもいい戦争の悲劇を書いてみました。
本当は十五年戦争の終わりまで書いたけど、結末がニホンちゃんとタイワンちゃんに
あまりに悲惨なことになっちゃったので書き込むのはやめました。
ところでここは毎回sageと書かないとクリアされちゃうのですか?それとも私の設定
のせいでしょうか?
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