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第1862話 有閑工房 ◆WOaKOSQONw 投稿日: 04/05/12 12:03 ID:lv3O6Vq8
『路上のルール』PART-2

 パツキン君とアメリー君の壮大な自爆はありましたが、お小遣いにあかせて大量に
花火を打ち込むアメリー君たちに、ゲルマッハ君も冷静に反撃しつつ後退します。
その間のマカロニーノ君の勇戦ぶりはたいしたもので、アメリー君が見えれば逃げ惑い、
まだ何もしていないのにエリザベスちゃんに白旗を振ってゲルマッハ君に引きずり
戻されたりと、自分の家もまともに守れない体たらく。存分にゲルマッハ君の足を
引っ張りました。とはいえゲルマッハ君も見捨てるわけにもいかず、何とかシチリア
の間から一緒に脱出しました。
 そしてその3日後、ゲルマッハ君がマカロニーノ家のあちこちにバリケートを作って
いる真っ最中にマカロニーノ君から電話が入ります。
「何だ?」
「ボクアメリーの味方になることにしたから、よろしくー。」
がちゃん
 ゲルマッハ君受話器片手に呆気に取られていましたが、ナッチ叔父さんが激昂している
のを見ると、どうもマカロニーノ君の家は総出で寝返ったようです。
『昨日の今日だぞ…』
 らしいといえばらしいですが、腹が立つのに変わりはありません。ゲルマッハ君も
エモノ片手にマカロニーノ君のいるローマの間に急ぎます。
「へへんだ。ボクにはアメリーとエリザベスって言うつおーい味方がいるからゲルマッハ
なんて怖くないやい!」
 部屋の入り口でバリケートを築き、マカロニーノ君虎の衣を借りて意気軒高です。
「で、あいつらいつ来るんだ?」
「もうすぐ来るのさ。いつかは良くわかんないけど。」
「そうか、それなら今ここでお前を僕が叩き潰したらどうなるかな?」
「そんなことしたら仕返しされちゃうもんねー!」
「どうせ喧嘩してるから、仕返しも何もないだろうが。」
「え……?」
「あいつらとは喧嘩の真っ最中だ。仕返しとかそういうことじゃないと思うと言った。」
「…」
「さあどうする?僕は準備できているが?」
「こ…降参シマース!」
 マカロニーノ君潔く軍門に下り、ゲルマッハ君に言われるがままにありったけの武器を
差し出しました。ゲルマッハ君顔には出しませんがかなり嬉しいです。なにせ大人達は
シマ争いにかまけて子供はうっちゃっていたので、ゲルマッハ君はお小遣いで爆竹一つ
買えない状況でした。確かに自分ちのおもちゃより壊れやすく使い勝手も悪いですが、
無いよりましってなものです。
「で、マカロニーノ、あいつらどこにいつ来るんだ?」
「いくら降参してもそれだけは言えないな。」
 マカロニーノ君、男ですね。
「そうだろう。それじゃあ大体でいいから答えてくれ、それならあいつらへ言い訳できる
だろ?」
「うーん、確かになあ。」
「これはお前のためでもある。あいつらお前のことを見捨てるかもしれないんだぞ?」
 マカロニーノ君その言葉にはっとします。確かにその通り。来るかもしれず、来ないかも
しれません。
『ここはいつでも言い訳できるようにしておかないと…』
 忠義とか義侠心とかは、身の安全あってのもの。そう即決すると、当たり障りの無い
程度でゲルマッハ君に打ち合わせていた内容を漏らします。
 ゲルマッハ君にしてみれば、きっかけさえ掴めればこっちのもの。あとは誘導尋問で
必要な事を聞き出して着々と準備に励みました。
「で、ボクはこれで関係なしだよね?」
 マカロニーノ君無邪気に質問します。
「何を言っている?お前も一緒に喧嘩するんだよ。」
「そんな…約束違うよ!」
「約束?初めからそんな約束とかしていないが?」
 当たり前のようにゲルマッハ君が答えます。
「約束違うよー…」
「まあ、これであいこって事だ。」
 そのままマカロニーノ君はゲルマッハ君にモンテ・カッシーノの間に引き摺られて
いきました。
     *
 さてその頃、マカロニーノ家は家を仕切っていたムソリニ叔父さんがナッチ叔父さん
の所に逃亡し、家の中は大騒ぎになっていました。一部はナッチ叔父さんに再び味方に
なり、ある者は連合組に味方しました。しかも当時流行のマル教に嵌った連中が、家の
あちこちに爆竹を投げ込んだり、枢軸組の構成員に喧嘩売ったりと大変な混乱です。
 そんな中ゲルマッハ君はアーリアちゃんと共に迎え撃つ準備を進め、マカロニーノ家
に踊り込んだアメリー君とエリザベスちゃんをあしらいながら、頑強なバリケードを
作ってしまいました。
「やれやれ間に合った。アーリア助かったよ。」
「兄上、たくさん作ったから何か名前でもつけたら便利じゃないかな?」
「うん、そうだな。そしたらここをグスタフ基地にしとこうか。」
「いいんじゃないかな。」
 子供時代に誰もが作る秘密基地のノリで二人は他の場所も次々と名前をつけています。
曰くナッチ基地、アルバート基地、ゴシック基地…親の喧嘩そっちのけで何だか二人共
実に楽しそうです。
     *
 そしてそのゴシック基地でゲルマッハ君たちがやいのやいのやっている最中、途中に
あった仕掛け花火や落とし穴とかをやっとこさかい潜ってアメリー君達が到着しました。
「マカロニーノん家?ラクショーラクショー!一日で叩き潰してやるYO!」
 と豪語していたアメリー君。基地の前に着いたときは既に4日経過しています。一緒
について来たエリザベスちゃん、疲れにむくんだ顔で愛想笑いをアメリー君に向けます。
それがアメリー君にはねぎらいでないのが痛いところ。つまりは『てめえが先に逝け』
という意味でしょう。
 取り敢えず一番きつそうな所をエリザベスちゃんに押し付けられ、アメリー君はそろり
そろりとグスタフ基地に近付きます。
 しかし、案の定…
パパパパパパパン!!!ひゅーーーー……
「NOーーーーーーー!!!」
 そこは爆竹とロケット花火が一番濃密な一角。自慢の九連装ロケット花火『ぱっとん』
も使う暇がありません。まだしも楽なはずのエリザベスちゃんは、花火が少ない替りに
落とし穴や泥だんごを散々ぶつけられ、こちらもご自慢の六連装ロケット花火『もんごめり』
が宝の持ち腐れです。
 それにしたってアメリー君たち、一家の従兄弟やら何やら総出で来ているのに、対する
ゲルマッハ君はアーリアちゃんとマカロニーノ君しか味方がいません。数にして10倍、
お小遣いの総額は差がそれどころじゃありません。その3人にいいようにあしらわれ、すること
といえば捨て台詞に逃げ口上。格好悪いことこの上なしです。
 アメリー君には緑の鉢巻をしてバリケートの向こうに立ちはだかるゲルマッハ君が、悪魔
にしか見えませんでした。
 おまけにゲルマッハ君のいる所は地球町でも有名なモンテ・カッシーノの間、部屋の
造りや調度品は誰もが褒め称える見事なものばかり。そんなものに当てたら大変と最初は
紳士的に攻めていたのが仇になり、気がつけば一家の誰もがグスタフ基地に近付きたくない
と怖気づいてしまいました。
 その2日後、『ぱっとん』は子供に過ぎたものと言われパパに取り上げられてしまった
アメリー君、なりふり構ってられなくなり、数撃ちゃ当たるとばかりにお小遣いの続く限り
花火をぶち込み、嫌がる子分を尻を蹴っ飛ばしてでも突っ込ませますが、被害が膨れる
ばかりでした。

つづく

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