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第1870話
有閑工房 ◆WOaKOSQONw
投稿日: 04/05/19 09:53 ID:XERcUsTc
『セクシャル☆バイオレット なんばわん』
地球町には各家が秘蔵する逸品が数々あります。何故だか女性用下着にその秘蔵品が
多く、しかも出自が微妙なものが大多数のため、隣の家の淑女やレディが虎視眈々と
我が物にするべく狙っているのが現状です。
かくいう我等がニホンちゃんも、竹島パンツはカンコ君に晒し者にされ、尖閣パンツ
は女性下着マニアのチュウゴ君や、あろうことかタイワンちゃんにも狙われる始末。
今日はそんなマニア眉唾もの…ではなく垂涎の一品、南沙パンツのお話です。
南沙パンツ−−−
正確にはブラ、ショーツそしてがあたあべるとを併せて呼ぶのですが、ランドセルも
取れないお子様が着用するには少々刺激が強すぎるため、所有者であるベトナちゃんは
大切に箪笥にしまっています。しかしブラはフィリピノ君に盗みに入られ、あまつさえ
チュウゴ君に分捕られてしまいました。
いつか立派なレディになったときに勝負…ではなくてとっておきのアオザイと共に
素敵な紳士とのロマーンスを夢見ていたベトナちゃん、この件いまだに根に持っています。
しかしある日……
「マ……ママン、それ……」
「あ、これ?せっかくいいものなのに使わないから借りたわよ。」
今日は珍しくママンが『みんなでご近所の親睦もかねてチュウゴ君の家の方々と夕食会
でもしましょう。』と提案し、ベトナちゃんとママンが戦闘モードでお着替えしている
最中でした。
そう、ママンが着用あそばしている下穿きはマゴウ事無きベトナちゃんの秘蔵品。
子供向きではないのは確かですが、それを親に持ってかれるのは流石に考えもの。ベトナ
ちゃんさっそく抗議…しようとして諦めました。あのママンがここで何か言ったからと
いって聞くわけありません。
憮然としてお気に入りのよそ行き用のアオザイに袖を通すベトナちゃんに、そっと耳元で
ママンが言います。
「ごめんねベトナ。でもこうでもしないとチュウゴ君たち黙らせられないの。」
「どういう事?」
「あんたが背伸びしても、あいつらにはなめられるだけって事。まあ、ママンに任せな
さいって。」
そういって不敵な笑みを見せるママン。ベトナちゃんも普段なら頼もしく思う所ですが、
ママンが事有る毎にベトナちゃんの南沙パンツを狙っていたのを身に沁みて知っています。
母親だろうが言葉面で信じきれないところがあるのを隠せません。
ベトナちゃんは不満そうにじーーーーっとママンを見ますが、どうやら軽く無視された
ようです。
*
「よ……ようこそ皆さん。今日は良くお越しくださいました…」
ベトナちゃんたちを招待したチュウゴ君一家。タクミンパパはママンの妖艶な姿に腰が
砕けてしまったようです。
「本当なら私たちがお招きしなければいけませんのに、ごめんなさい…」
ママンが応じますが、その慇懃で申し訳なさそうな 演 技 は、町内の誰も敵わない
のじゃないかとベトナちゃんは一人ごちていました。勿論表に出しません。
ママン今日はいつものアオザイ姿ではなく、際どいスリットの入った真紅のチャイナドレス
姿。スリットの切れ込みが深いということはつまりあれです。あれなんです。
そんなだから家族一緒に来ているはずなのに、パパやホーチミン君はともかく、ベトナ
ちゃんすらただの引き立て役になってしまいました。
ようやく煩悩の一撃から立ち直ったタクミンパパは、鼻から一筋赤い線を出したまま凝結
していたチュウゴ君をはたいて我に返させると、全員を奥に導きます。
しかしタクミンパパもチュウゴ君も後ろを歩くママンの衣擦れの音が気になり、一目その
姿を見たい欲望と、『ここで振り向いたら敗北必至』という男のプライドの間で心が激しく
揺れ動きます。遂に誘惑に負けてチュウゴ君が振り向こうとした瞬間、タクミンパパから東風
アタックを浴びせられて泣く泣く我慢するのでした。そんな父子の姿を、後ろでチュウゴ君の
ママとベトナちゃんが、『働きに出ても逆にギャンブルに染まって借金増やして帰るダメダメ
なアル中の旦那』を眺めるような目で見ていました。
それから部屋に入っても、父子の葛藤が続きます。
誇り高き漢の気概が、不二子ちゃんアタックをかましそうになる気持ちを辛うじて押し
止めていましたが、こう目線が行ってしまうと小さな仕草一つ一つがモアセクシィになって
しまうのが悲しいところ。
「パパ…朕は辛いアル。自分が子供であることを今日ほど悲しく思ったことは無いアル。」
「息子よ……父も辛いのには変わりは無いアルぞ…。今ここで自分に負けてしまえば、父とて
無事には済まないアル。横をそっと見るアル。ママが物凄い顔で料理を平らげているアル。」
言われて見てみれば、チュウゴ君のママは何が面白くないのか(そりゃ面白くないで
しょうな)、普段ではありえない勢いでテーブルの上を片していきます。チラッと一瞬目が
合ったチュウゴ君、始皇帝顔負けの眼力にすぐ目を逸らせました。
それを知ってか知らずか、ママンがうっかり箸を床に落としてしまいました。
「あらやだ、はしたない。」
照れ笑いを浮かべながら落とした箸を拾います。なんとなくそれを見ていたタクミンパパと
チュウゴ君、少し横向きになったママンの姿勢から、
ちらっ
と生足が顔を出しました。タクミンパパは紹興酒をあおった姿勢のままぶーっと噴出し、
チュウゴ君はチュウゴ君で持っていた箸と取り皿が綺麗に自由落下しました。
「あら、どうかなさいました?」
ママン、すかさず追い討ちです。知ってるくせに。
「い、いや何でもないアル。魚の小骨が引っかかって、むせてしまっただけアル。なあ、
チュウゴ。」
「そうアル。お、親子二人で情けないアルな。ははははは…」
「そうでしたか。お気をつけくださいね。」
にっこり笑うママン。笑顔に父子はメロメロです。
「それにしても今日の 鶏 肉 料理は素晴らしいですわね。さすがチュウゴ家ですわ。」
さらに微笑みかけるママン。笑顔に父子は真っ青です。
*
こうして天国の目の前で父子が地獄を味わう食事会は何とか終わり、ベトナちゃん一家
が玄関前でお礼を言います。
「今日はご招待して頂いて、ありがとうございます。」
「いや何、アジア町の町内会長として当然のことアル。」
タクミンパパ何とか平静を保ちつつ応対します。因みにベトナちゃんのパパは万事
ママンに任せきりにしているため、なーんもせず、発言すらなしです。
「ああそうだ。」
「何アルか?今日は何でも言うことを聞いてしまい気分アル。」
「そうですか…実はこんなお話しするのに相応しい場所じゃないんでどうかと思うんですが…」
ママンがタクミンパパに、次いでチュウゴ君にさりげに流し目をします。
「実は、チュウゴ君がうちのベトナの下着の一部を盗んだとか聞きまして、まさかとは思い
ましたが一度聞いておこうと思いまして。セットの一部はこれなんですけどね…」
そう言うとママンはドレスのスリットからお御足を差し出し、があたあべるとが良く見える
ように『これ』と指差します。
ぱっつーーーん
と何かが切れる音がして、チュウゴ君が脊髄反射のようにしゃべり始めました。
「ウンボクシッテルヨ イマカラモッテクルカラ オネエサンツケテミテ…」
そう言って180度回転すると勢いよく駆け足体制に入りました…が、駆け出すより早く
タクミンパパの足払いを喰らい、倒れたままで手足をばたばたさせています。
「パパナニスルアルカ チンハイタイ チンハイタイ チンハイタイ」
「黙れバカ息子、奥さん、すいませんね、何だか息子が取り乱してしまいましたが、うちに
そんな恥知らずの人間がいると思えません。しかし一度調べてみましょう。」
「そうですわね…噂話程度なので気になさらないで下さいね。誰が盗ったのか知りませんが、
本当に恥知らずで(ぴくっ)、破廉恥で(ぴくくっ)、人の風上にもおけない(ぴくぴくぴくっ)
泥棒ですわね。」
「はは…は、全くです。犯人を捕まえたら早速…おしらせ…するアル…」
額に無数の青筋を浮かべつつ、タクミンパパが快諾します。
*
「ま、今日はこんなもんね。」
「……」
帰り道、ベトナちゃん、ママンが実の母親で良かったなあとこういう時シミジミ考えます。
そのママンはパパとじゃれあいながら前を歩いています。時たま二人はこうやってべたべた
しています。
『仲がいいなあ…』
両親の仲がいいのは歓迎すべきこと。喧嘩してとばっちりが来るのは真っ平ごめんです。
前の二人は子供そっちのけで腕なんか組んでさらにいちゃつき始めます。
「今日の格好どう?似合ってる?」
「うん。綺麗だよ…」
『うんうん、ママンは綺麗だ。私もああなれるのだろうか?』
盗み聞きしつつベトナちゃんは思いました。しかしそれにしてもくっつきすぎではない
でしょうか?もうあれは子供は全く眼中になしです。
段々とママンが猫撫で声になります。そういうのを聞き慣れないベトナちゃんには非常に
違和感があるのですが…
そして帰宅しましたが、ママンとパパは着替えもせずに寝室に直行。ホーチミン君共々
呆気にとられてしまいました。
確かに後は寝るだけ。することは無いです。子供はね。
「じゃ、おやすみベトナ。」
ホーチミン君、いつもどおり淡々と言い、さっさと自分の部屋に向かいます。
「うん、おやすみ。」
なんとなくベトナちゃん釈然としませんが、他にどうするという訳でもなく、結局寝ること
にしました。
次の日の朝、パパとママンはとても素敵な笑顔で、起きてきたベトナちゃんにおはよう
を言ったそうです。
おしまい
後日譚
「ママン、そろそろ返して。」
「何を?」
「南沙ぱんつ…」
「ああ、あれ?あんたが持ってたらまた誰かに取られちゃうわよ。それに小学生にはまだ早い
から マ マ ン が 預 か っ と く わ 」
「うぅ…返してぇ返してよぉ…」
涙を浮かべて子供パンチでママンをぽかぽか叩きますが、結局帰ってこなかったようです。
「チョイヨーーーーイ! 訳)アイゴォーーーーー!」
解説
有閑工房 ◆WOaKOSQONw
投稿日: 04/05/19 10:01 ID:XERcUsTc
解説・群島・気息奄々
※ 今回は南沙諸島問題をば。尖閣と同じく埋蔵資源に目がくらんで色んな国が領有権を主張中。
随分前に見た中国発行の全国図には『フィリピン北端までぜーんぶ朕のもの』という旨明記されて
おりました。
※ 西沙諸島でも両国は領有権を巡って鋭く対立。ベトナムが居座って油田開発を始め、実効支配
を着々と推し進めております。中国は石油輸入国に転落したため、エネルギー政策は死活問題、
強引な領有権主張は安全保障上もあるでしょうが、主な理由は油でしょうね。
※ えー、下着セットと相成ったのは、中国が基地作ったりフィリピンが喚いたり、ベトナムが
観光航路開設したりと所有者が色々な為ですな。パンツ一枚じゃ破けちゃうw
あと色っぽい=資源いっぱい。決して趣味じゃありませんよ。ええ、そうですとも。があたあべると
は下着の王様とのたまった木村拓也に激しく同意なぞしてませんとも。丸見えよりむしろ見えるか
見えないかにときめいたりなぞとんでもないです。
紫色のソース
→人民網 People's Daily Online
http://fpj.peopledaily.com.cn/home.html
→南沙諸島にベトナムが航路開通へ 外交部が見解発表
ttp://j.people.com.cn/2004/04/17/jp20040417_38652.html
→現代中国ライブラリィ
ttp://www.panda.hello-net.info/index.html
→紛争予防の「行動宣言」に調印 『南沙諸島/スプラトリー諸島』
ttp://www.panda.hello-net.info/keyword/na/nansa.htm
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