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第1917話
ab-pro
投稿日: 04/06/29 01:04 ID:mPR8lZNX
ゆっくりと動き出す貨物列車。
キッチョム君の家に面した、チュウゴ君の家の丹東の間。キッチ
ョム家に向かう路線を、その貨物車は確実に進んでゆく。
遠ざかってゆくその影を見送る男。
肉がそげ落ちた顔の中で、異様にぎらついた目の玉。男はついに
復讐を第一歩を踏み出した。
「地上の楽園」という名前を持つ地上の地獄で、男は家族を失っ
た。だからもう失うものは無い。失う物が無いのであれば、後は何
を為すべきなのか?
悲しみのための涙も枯れ果てた後、男は少しずつ計画を練り、つ
いに行動に移した。
処分できる物はすべて処分し、大枚をはたいて携帯電話を買うと、
兵隊時代に教えられた知識で爆発物を作った。
後は情報を集めて分析するだけ。
下手をすればタバコ一箱で軍事情報が手に入る、腐敗はびこる我
が家では、男でも使える財産に応じて奴の情報が手に入った。
キッチョムの豚野郎が列車でチュウゴ君の家にご機嫌伺いに行く。
男にとっては絶対にして唯一のチャンスだった。
キッチョムの移動期間には、キッチョム家の最寄り駅や線路には、
一般人は絶対に近づくことが出来ないだろう。
でも、チュウゴ家の駅で、キッチョム家に向かう貨物列車なら!
賄賂を使いチュウゴ家にやってきた男は、丹東の間でキッチョム
家に向かう、重油を積んだ貨物列車を見つけた。
その列車の時刻表を確認すると、男は重油タンクの裏に携帯電話
を起爆装置とした爆発物を仕掛けたのだ。
後は・・・
男は丹東の間を後にした。行く先はキッチョム家竜川の間。
その時、男は竜川駅がかろうじて見える位置にいた。
もうじきキッチョムの豚野郎が乗った列車がこの駅を通る。予想
通り駅や路線の近くは警備員であふれかえっていた。
しかしそんなことは男に関係がない。ポケットに忍ばせた携帯の
メール送信ボタンに添えられた指先。その指先に力を込めるだけで、
駅の待避線で、キッチョム号が通過するまで待機している例の貨物
車の重油タンクが爆発する。
その爆発の規模は・・・
おそらく列車が見える位置にいる男をも吹き飛ばすだろう。しか
し、男はそれで本望だった。あの豚野郎を消し飛ばし、失った家族
にも逢えるのだから。
そして・・・
ついにキッチョムの乗った列車が、男の視界へと飛び込んできた。
男は、ゆっくりと目をつぶると、頃合いを見計らって指先に力を
込めた!
そのころ、竜川の間の配電係達。
「大変ニダ!部屋の電力が足りないニダ!」
「アイゴ!ウリには家族がいるニダ。停電で首領様の乗った電車
が止まったら収容部屋行きニダTT」
「落ち着くニダ、同志達。
部屋への配電をやめて、電車に重点的に電気を流せば大丈夫ニダ!
うまくいけばこの試練を無事に乗り越えられたと、首領様からご
褒美が貰えるかもしれないニダ!」
「さすが同志。早速そうするニダ!」
そして、配電係達は送電スイッチを操作した・・・
送信ボタンを押し、閉じた視界の中で死を待つばかりの男。
しかし、いつまでたっても男に安楽をもたらす爆発はやってこな
かった。
すべてを失った男が、命をかけて練り上げた計画。ミスはないは
ずだった。
男は慌てて目をあける。そこには先程と同じ光景があった。何か
の間違いなのか?
再び指先に力を込める。
・・変化なし!
鼓動が早くなりながら、男は平静を装ってポケットから携帯を引
き出した。
「圏外!」
朝方には感度があったことを確認していたのに!
ガクガクと震えだした視界の中、男はフラフラと歩き出した。
まだ死ねない。あの豚野郎を殺すまでは!
ブツクサと何事かを呟きながら、男はその場を後にする。
まるで動く亡霊のような男を、誰も気に掛けない。そんな人間は
この地上の地獄ではどこにでも頃かっいるのだから。
それから九時間後。配電係達。
「やっと消費電力が下がって電力の供給が再開できそうニダ」
「まあいつものこととはいえ、今回だけは命が縮んだニダ」
「では、スイッチを入れるニダ」
その刹那後。
突然の停電でサーバーに止まっていた男が送信したメールは、
通電して再び動き出したサーバーによって、指定された宛先に九時
間ぶりに送信された。
そして・・・・
とぼとぼと竜川を出ようとしていた男の背後で大爆発が起こった。
呆然として振り向いた男の視線の先に、そこからでも見て分かる
惨状が広がっていた・・・・
「アイゴー!!」
その男の絶叫は、例えようもない悲しみを帯びていた。
END
解説
ab-pro
投稿日: 04/06/29 01:06 ID:mPR8lZNX
ソースは下記の通りですが、Googleの検索からは行けたのに、ペ
ージ自体には直接行けないTT
今年に入って北朝鮮でも一般住民が携帯電話を持つことが許され
たのですが、列車事故の後暫くして突然携帯は没収。
その後イギリスの新聞が、事故現場で発見されたガムテープで固
定されていたと思われる携帯電話から、北朝鮮当局がこの事故が首
領様暗殺事件として捜査していると報道しました。
何故九時間遅れなのかは不明ですが、本作ではそこら辺をフィク
ションしてみました。
しかし、前作もそうでしたが、どうもニホンちゃんの作風らしく
ないなぁ、本作は^^;
列車事故(北朝鮮 列車事故)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/23/200404
23000043.html
北朝鮮の携帯(北朝鮮 携帯)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/06/11/200306
11000071.html
携帯使用禁止(北朝鮮 携帯)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/06/02/200406
02000032.html
暗殺未遂(北朝鮮 暗殺)
http://www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?
id=1087175767&jl=ts
リンク訂正
列車事故
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/04/23/20040423000043.html
北朝鮮の携帯
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/06/11/20030611000071.html
携帯使用禁止
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/06/02/20040602000032.html
暗殺未遂
http://www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?id=1087175767&jl=ts
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