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第2018話
ab-pro
投稿日: 04/10/17 23:39:39 ID:VAUXb8YF
それは、何気ないアーリアちゃん呟きがきっかけでした。
「昔のほうが、良かったなぁ・・・」
その言葉をたまたま聴いたゲルマッハ君が、突然、アーリアちゃんに詰め寄ったの
です。
「アーリア、それはどういう意味だ!!」
普段のクールなゲルマッハ君からは想像もつかない怒鳴り声が、ドイツ家のダイニ
ングに響き渡ります。
そんな兄の豹変に、一瞬、辛そうに視線を落としたアーリアちゃんですが、そっと
ため息を漏らすと、挑みかかるように眼差しを兄に突きつけたのでした。
「・・・昔のほうが、良かったように思えるのです、兄上」
この言葉に、ゲルマッハ君は握り締めた拳を震わせたのでした。
この兄妹がまだ物心つく前に、ドイツ家は二つに分断され二人は引き裂かれてしま
いました。それから時がたって、再びドイツ家が一つになった時、二人は涙を流して
再開を喜び合ったものです。
それが・・・
「いったいあの頃の東ドイツ家どこが、今の家より良かったなんていえるんだ!」
妹の言うことがまったく理解できないといった感じで、語気荒く問いただそうとす
るゲルマッハ君。
しかし、普段は知的で妹思いの彼がここまで怒るのには訳がありました。
ドイツ家が一つになる直前の、東ドイツ家の家計の悪さは、東ドイツ家にしてみれ
ば予想を遥かに超えるものがあったのです。
それでも西ドイツ家は、再び家族が一つになるために一生懸命になりました。ゲル
マッハ君もお小遣いを半分に減らされ、挙句に今までこつこつと貯めていた貯金も、
いったいどれだけ家を一つにするために使われたことか・・・
・・・・それだけ頑張ったのに、再会を果たした妹から「昔のほうが良かった」な
どと言われれば、ゲルマッハ君はまったく報われません。未だにお小遣いは半分にさ
れたままなのですから。
「確かに昔の東ドイツ家は貧しくて自由もなかった。だけど・・・」
それなのに、なおも彼の努力を否定しようとするアーリアに、ゲルマッハ君は思わ
ず握り締めた拳を振り上げます。
その兄の姿を、アーリアは拳から身を守ろうともせずに静かに見つめていました。
そんな妹に、ゲルマッハ君は衝動的に振り上げていた拳を力なく下ろします。
「・・・もういい!」
それだけ言うと、ゲルマッハ君は怒りを越し殺すように自分の部屋へと立ち去った
のです。
やがて、自分の部屋に姿を消した後も、兄の後姿の残像を見つめていたアーリアは、
そっと呟くのでした。
「・・兄上。分かっているのです。兄上に莫大な迷惑をかけ続けていることは。
でも、兄上にも分かってほしい。たまに、無性に昔が懐かしくなってしまう。
・・・人はパンのみに生きるのではないのだから」
こうして兄妹喧嘩に突入してしまった、ゲルマッハ君とアーリアちゃん。子供の兄
妹喧嘩はすぐに仲直りしてしまうものですが・・・。
明日、学校に行く頃にはケロリと仲良く登校していることを願わずにはいられません。
END
解説
ab-pro
投稿日: 04/10/17 23:41:37 ID:VAUXb8YF
というわけで、ドイツの東西格差がソースです。
http://tanakanews.com/991027germany.htm
http://news.goo.ne.jp/news/reuters/kokusai/20040921/JAPAN-157556.html
http://www.tkumagai.de/Doku%20PDS.htm
http://www.tkumagai.de/Homai%20unemployed.htm
実はヨーロッパ・ピクニックを書いたときの参考HPのアドレスが、HDクラッシュと
ともに消えてしまって・・ あれが一番詳しいのですが、まあ事の次第は皆様もご存知で
しょうから。 それでは
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