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第2121話
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/01/22 01:55:55 ID:JocjRZwW
「空想特撮シリーズ ウルトラニホン」
今、地球町は狙われている。
頻発する怪事件。謎の怪獣の襲撃。未知の異星人の襲来。
そう、地球町は今、未曾有の危機に直面しているのだ。
ここは地球町小学校地下深くに設けられた、地球町防衛組織
コアリッション秘密基地の作戦室。地球町で起こる怪事件は
全て此処へ情報が集められ、直ちに訓練された有志達による
迅速な対策が実施される。
そして今、ビーッビーッというけたたましい警告音が鳴り響く。
レシーバーを耳に当てた情報・通信担当ラスカ隊員がコンソールに飛びつく。
「隊長、大変です!」
「どうした、何があった!」隊長のアメリーが応える。
「イン堂池中心付近に特殊な地震波観測!怪獣出現の可能性アリ!」
「なにぃ判った、全員緊急出動だ!ラスカ隊員は引き続き怪獣の分析、
及び連絡任務に当たれ。細かい支持は移動中に無線で行う!」
隊長とラスカ以外の--イン堂、オージー、カナディアン、ネーデル、そして
ニホンの各隊員はヘルメットを被ると部屋の一面に並ぶコクピット用シート
に座った。がちっと安全装置のロックがかかるとシートはそのまま背後の壁
に吸い込まれる。リニアレールの上を数秒、あっという間に最新鋭機「ウル
トライーグル」の格納庫へ到着だ。シートごと各自の愛機の操縦席にセット
されると隊長機から順にカタパルトへと横移動。校舎壁面の緊急出撃用発射
口が開くと準備完了だ。「ウルトライーグル、全機発進!」
隊長の号令と共に、轟音を残しウルトライーグルは地球町の空へと消えてい
った。目指すはイン堂湖。怪獣の正体は依然不明だ。
「ラスカから各機へ連絡。怪獣の詳細判明。津波怪獣シードラゴと思われます。
既にイン堂湖沿岸各地はシードラゴの襲撃を受け甚大な被害を受けています。」
「な、なんだって!俺の地区が!」イン堂が叫ぶ。「落ち着け、イン堂!」
アメリー隊長が指示を出す「イン堂及びニホン両機はイン堂地区方面に急行、
被害状況の確認及び救助の指揮に当たれ。それ以外はシードラゴの探索及び
撃滅に当たれ。」「隊長、誰の助けも要らない・・・全員で怪獣を片づけて
くれ。」「イン堂くん、私では助けにならないかなぁ?」ニホンが問いかける。
「・・・判った、来てくれニホンちゃん・・」
かくて、イン堂、ニホン両機は別行動を取る事となった。
「イン堂くん、やっぱり私は頼りないかなぁ?」
モルディブ地区上空へさしかかった辺りでニホンが問いかける。イン堂はくすっ
と笑い「僕の地区の連中はプライドが高いってだけさ。他の地区の人間には弱い
処を見せたがら無い。でも日本ちゃんな、う、うわぁ!なんだあれは!」
突然海面が50メートルの高さに膨れあがり、巨大なヒレの突いた右腕がイン堂
機に向けて振り上げられた。圧倒的な力で振り回されるその腕は、ただそれだけ
で大量破壊兵器だ。「か、怪獣シードラゴ。」初めて間近で見る怪獣の姿にニホン
が圧倒される間に、怪獣の口から巨大な水流がニホン機へ叩きつけられた。
あれ。私どうしたんだろう?
もしかして、死んじゃった?いやだなぁ、未だ何にもしてないのに・・
ニホンは今圧倒的な光の奔流の中に浮かんでいた。
「死んだ訳ではありません。」静かに語りかける声が頭の中に響く。
「あなたはだあれ?」「それは未だ言えません。一つだけ言えるのは、今回の事
件は私の不手際だと言う事だけです。貴女はまだとても若い。だから助けてし
まった・・・」「じゃ、生きてるの?」「本当に生きているとも言えない。」
え・・・ 絶句するニホン。謎の声に焦燥感が加わる。
「時間がありません、左手を出して」ニホンが左手を前に差し出すと突然青い指
輪が中指に現れる。「貴女にこの指輪を差し上げます。本当に困った時にこの
指輪を掲げて”今こそ力を”と願いなさい。いずれ、全てをお話します。」
気が付くとニホン機は失速直前だった。どうやら先ほどの一撃は免れた様だ。
慌てて姿勢制御を行いつつイン堂機を確認すると、怪獣と交戦の真っ最中だ。が、
足止めにもなっていない。ワニにも古代魚にも似たシードラゴは沿岸に進行中。
「今のままでは、また沢山の人達が犠牲になる」
そう思った瞬間、ニホンは左手を掲げて”今こそ力を”と願っていた。
圧倒的な、圧迫感すら感じる光が怪獣の行く手に突然現れた。と、次の瞬間
それは40メートルの輝く巨人に姿を変えた。青と銀の身体、金色に輝く双眸。
青黒く長い髪。細りとした少女にも似た体型の巨人は、ふた周りは大きかろう
怪獣に向かって湖上を走った。速度を生かした体当たりにざばっと巨大な音を
たてながら仰向けに転がるシードラゴ。跳ね返りざまに100メートル程虚空
へジャンプする巨人は、そのまま滑空し両足で怪獣の首筋へキックをたたき込む。
ずおう、と首筋から緑色の体液を吹き出すシードラゴ。そのまま60メートル程
飛び退ると、左手の平からすっと光の槍を引き抜く巨人。その槍を一気に
怪獣目掛けて投げつけた!一瞬で光に浸食され、断末魔を残して消滅する怪獣。
何事もなかったかの様に静まりかえる湖。
軽くうなずくと光の巨人は彼方へと飛び去るのだった。
「ニホン、ニホンちゃん、何処にいる?」コクピットの中で叫び続けるイン堂。
つい今しがたの光の巨人の格闘に魂を奪われ、怪獣にたたき落とされた僚機を
忘れていたのだ。レーダーからは消えて、いや、今再びニホン機はレーダーに
現れた!どうやら海上に不時着しているのを目視すると、イン堂隊員は無線で
呼びかけた。「おい、無事か?」数秒の雑音の後無線機がニホンの声をはき出す。
「・・イン堂くん、無事だったの・・」どこかまだ夢を見ている様にニホン
が応えた。その直後、張りのある少女の声が呼びかける。本部のラスカ隊員だ。
「・・・こちらラスカ、イン堂隊員、ニホンちゃん、聞こえますかぁ?」
「ハイ、こちらイン堂。怪獣は・・・消滅。詳細につき本部帰投後報告、以上」
ふぅ、とため息の後ニホンへ呼びかける。「ニホンちゃん、自力で飛べるかい?」
「うん、大丈夫みたい。何とか離陸できそう。」
一安心しながらも、報告が大変そうだ、と呟くイン堂隊員であった。
「同時刻のモルディブ地区の目撃証言は多数です、でも・・」と地道な事後調査
の報告をするカナディアン隊員。「全てのカメラ、センサーは何のデータも取れ
ていません。」「それは本部も同じですよぉ。10分弱の間、あの地区はここ
から全然見えてなかったんですから。」とラスカ隊員。「しかし、気になる事
が一つ・・」「何、それ?」「いや、目撃者が云うにはニホン隊員が光の巨人
に成って津波怪獣を倒した、って目撃証言が多数、ね。」
「そんなバカなぁ、だって本人は気を失って記憶がないって・・」「まぁ、兎に
角」と割り込むアメリー隊長。「我々以外の未知の力のお陰で怪獣を撃退でき
た。是は事実だ。で、この巨人を」とここへラスカ隊員がはいっと挙手をする。
「お兄さま、提案。彼女をウルトラニホンって呼ぶの、どうでしょう?」
笑いさざめく作戦室の中で、ただ一人左手の指輪を見つめるニホンで
有った。指輪は何も応えず、ただ青く光るだけだった。
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「ねぇさん、こういうの好きだっけ?」「うーん。」
ウヨ君の問いかけに気のない返事を返すニホンちゃんです。
この仲の良い姉弟は、時々こうやってお互いの部屋で互いが
コレクションしているビデオやDVDソフトを鑑賞し合って
いるのです。今日はウヨ君お気に入りの特撮ものを見ていま
した。普段は興味も示さないニホンちゃんですが・・・
「だってこのシリーズ男の子向けだと思うんですけどねぇ。」
「ゲージュツの鑑賞中に邪魔をしないの。」
「ちゃんとソフトしまっといてよぉ。」と言い残して自分の
部屋から出てゆくウヨ君でした。ニホンちゃんはこの時有る
事に気が付きました。「この指輪、いつ買ったんだっけ?」
彼女の左手では青い指輪が不思議な輝きを放っていました。
解説
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/01/22 02:16:49 ID:JocjRZwW
あとがきでございます。
鬼が出るか蛇が出るか、遂に手を付けてしまいました
変身もの。しかも止せばいいのにメタストーリーです。
し か も
>748
さんがウルトラシリーズをやっているにも
拘わらず。まぁ、世の中には同じようなタイミングで同じよ
うな事をする奴が居る、とお思い下さい。同時性って
やつですかぁ。
そうそう
>782
で
× 「・・イン堂くん」、無事だったの・・」
○「・・イン堂くん、無事だったの・・」
とタイプミスですなぁ。
そうそう、黄色いリボン様、他皆様へ。
「踊る!?アメリー御殿」、意外と好評で驚いております。
今後とも精進いたしますです。
また、ご批評、ご指導、毀誉褒貶、ご注文、等々
お待ちいたして居ります。
>>784
肝心な事を書き忘れておりました。
今回のハナシは一応ネタありです。
昨年末に発生しましたインドスマトラ沖の地震性
大津波です。地球町防衛組織コアリッションは
リアルアメリー家が呼びかけた災害復興の有志連合。
メンバーは作中の通りです。(実際機能しているかは〜)
イン堂君がニホンちゃんだけ支援を頼んだのもニュース
の通り。モルディブでは被害をほぼ免れたのはニホン家
ODAで造った護岸工事の為。
こんな処です。
元ネタが是なだけに流石にスラップスティックには
出来ませんでした。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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