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第2193話
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/03/19 03:22:09 ID:kK7FGKLj
「記者探偵アサヒ 第2幕 謎の怪人四千面相 の巻」
此処、ユウラクチョウは目抜き通りに面したと或るカフェ。
「つまりはまたしてやられた訳ね。予告通りに」
珈琲とサンドウィッチにアップルパイを頼みながら記者探偵、
アサヒは云いました。
もちろん払いは全て男装の麗人、エリザベス警部に廻すつもりです。
「全く持って面目次第もない事だ。
だから諸君の助力を請いに参上した次第なのだよ」
やや憮然と警部は云いました。諸君、と言ったのは他でもなく、
アサヒとその助手、婦人カメラマンニホンと記者見習ウヨを含めての
事であります。この3人、既に探偵としての評価は折り紙付なのです。
(尤も、世間では全てアサヒの手柄と云う事になっていますが)
ニホンとウヨの姉弟は、アサヒの、たかる相手が居る時にはやや過剰に発揮
される健啖振りを呆れながら眺めています。
可哀想な警部のお財布、と口の中で呟くニホンでありました。
さて、警部の語る事件のあらましですが、ここ数ヶ月ほど名家が軒を
連ねるお屋敷外を次々と「四千面相」を名乗る怪人が荒らし回っているの
だそうです。大胆にも盗む獲物と日時を予告状に指定し、そして予告通りに
実行する大胆不敵な怪人の犯行に警察の面目は丸つぶれです。
そして昨夜、今度こそと必勝を期した布陣で待ちかまえたアメリー邸にて
またしても犯行は行われたのでした。大胆にも屋敷の主、アメリー氏本人
に成り済まし、事も有ろうか警部の前で犯行を行い悠然と逃亡する怪人四千
面相。警察の切り札たる警部の敗北に、最早為すすべ無しとして
「記者探偵アサヒ」に助力を求めに来たのだそうです。
「ふーん、予告状に派手な手口。おまけに変装の名人ねぇ」
デザートのプリンを頬ばり乍ら呟くアサヒでした。
「うふふふ。そうそう警部、この間おごって頂ける約束だった活動写真も
事のついでにおねだりして良いかしらねぇ」
片手で頬杖を突きながら警部の顔を下から見上げるアサヒです。
意味ありげに助手壱号ことニホンに流し目を送り、
「助手壱号もこの際一緒に行こうよ。喜劇王の新しいのがやってるってよ」
と、くすくす笑いながら声をかけます。
「い、いや私は約束があるから。そ、そうだ助手弐号なら付き合うわよ」
姉さん、と言いかけるウヨを掣肘しながら
「ほ、ほらぁ助手弐号も喜んでお供しますって」
何だか妙にそわそわしながらニホンは答えます。
「残念です事。では三人で活動写真を見て、餡蜜でも食べてから
現場へ参りましょうか。さぁ、参りましょう、参りましょう」
憮然としたウヨと当惑した警部を連れて店を出る嬉々としたアサヒでした。
「で、結局ですね。餡蜜の後に浅草で見せ物小屋見物までしてきましたよ」
一同が犯行予告のあったチューゴ邸でニホンと合流した時には既に予告時間
の30分前でした。ウヨ君憤懣遣る方無しです。
「ねぇ、それで警部は誰かと連絡取ったりした?」
「取れる訳無いでしょう。アサヒさんが気が向くままに銀座から上野、
今度は浅草って引っ張り回すんだから。捜査妨害でしょう、あれ」
そう、とほっとした様に返事をするニホンでした。
こち こち こち こち
大広間の大時計が秒を刻む音が妙に大きく聞こえます。
そして遂に、ごーん、ごーん、と時報がなります。
予告された時間になったのです。と、突然
わはははははははははは
という哄笑と共に天上の明かり取りの窓が割れる音が響きます。
「か、怪人四千面相!」
警部が思わず声を上げます。
「警察の諸君!そしてエリザベス警部よ、ご苦労だったな!
約束通り当家の秘宝、皇帝の玉爾は確かに頂戴した!」
響き渡る声と共にこれ見よがしに翻えす黒マントの怪人。
「まてぇ、今日こそは逃がさない」
駆け出す警部。そして、ニホン、ウヨ。
同時にアサヒも駆け出し、えいやとかけ声と共に大きく飛上がり
そして、警部の腰に抱きつき一気に引き倒しました。
「捕まえたぁ!」
一瞬で凍り付く警官隊とウヨ。床の上で組んずほぐれつの
格闘をしているアサヒと警部を前にどうして良いか判断が付きません。
「武士ちゃん、何やってるの!早くアサヒちゃんを手伝ってぇ!」
咄嗟の姉の声に意を決してアサヒの加勢に入るウヨ。
警部の女とは思えぬ怪力に仰天しながらも、どうにか捕縛に成功します。
「全く、手こずらせるわねぇ」
はぁはぁ、と息を切らせて床にへばり込むアサヒでした。
「さぁ、観念して貰おうか、怪人四千面相とやら」
思わぬ声に振り向く一同が目にした声の主は、黒衣にマントの怪人です。
「か、怪人四千面相」
思わず驚愕の声を漏らすウヨでした。
「大体、あのどけちエリザベスがあんなに気安く私におごってみせるのを
全然変だと思わなかった訳?助手弐号くん?」
身体のあちこちに残る擦り傷も誇らしげにアサヒが胸を張ります。
「全く、上手に私に化けたものだな」
苦々しく、捕縛された”偽警部”こと「怪人四千面相」に言葉をぶつける、
未だ四千面相の扮装のままのエリザベス警部です。
「ちゃんと説明してくださいよぉ。僕は未だに混乱してるんですから」
ウヨ君が悲鳴を上げます。
「つまりねぇ、一昨日には既に本物の警部と連絡取ってたのよ」
アサヒがさも勝ち誇ったかの様に蕩々と説明を始めます。
怪人四千面相の事件を追っていたアサヒは、被害者の盗まれたものに
奇妙な共通点があるのに気が付いていたのです。
全て警部の実家が営む保険会社が保険をかけていた物件で、
全ての保険が支払われるとトーキョー支店が立ちゆかなくなる程の
値打ちがあるものばかりです。
そして、其処の保険が掛かっている最後の物件が、
今回予告のあった「王家の玉爾」だったのです。
「ふん、犯行の手段だって子供だましよねぇ。変装だの予告状だの
派手にするって事は、その影で何かやりますって言ってる様なものだし」
「取り敢ず其処まで判ってたから警部に連絡とって、このチューゴ邸に
接触する人間を調べていたのよ。事前に潜入する人間が居ないかどうかね」
と、言葉を繋ぐニホン。
「其処へ大胆にもこいつはアサヒ記者に連絡を取ってきた訳だな」
既にいつもの服装に戻ったエリザベス警部です。
「そうそう、だから今日一日こいつを引っ張り回して、仲間から切り離して
その間に罠を仕掛けた訳よ」
ふふん、と鼻で笑うアサヒです。
「問題は犯行の動機なんだけど。警部の実家を陥れる理由って・・・」
と、アサヒが言いかけた瞬間、轟く爆発音と一瞬に煙幕に包まれる周囲。
騒然とする中、煙が薄れ辺りが見える様になると、既に捕縛されていた
怪人の姿がありません。
「くそお、逃げられたか!」
悔しがるウヨを余所に、辺りに哄笑が響き渡ります。
「ふははははは、さすがは名探偵さん達だ。今回は完敗だよ。
またどこかでお会いしよう。ひとまずはさようなら」
既に辺りには怪人の影も形もありませんでした。
完
解説
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/03/19 03:36:57 ID:kK7FGKLj
後書きやら何やらかんやら
ふう、やっと書き上がりました。
No93さまの絵を元にしたオハナシです。
まぁ取り敢ず大正時代のカフェで出された
メニューを調べるのに時間が掛かって
ストーリーが荒いのはケンチャナヨです。
>>556
掲示板で「探偵モノ」は結構難しいですよね。
最終話期待しています。
さて、同じNo93さまの絵を題材にした
話なのに枢軸探偵社はハードボイルドタッチなのに
何故か記者探偵アサヒはコメディに走りがちな件
については、
ま ぁ 気 に す る な (AA略
と、申し上げておきます。
では皆様のご批判ご要望等々お待ちしております。
ああ、そうそう。
プリン、サンドイッチ、アップルパイ等は
本当に大正時代のカフェで出された居たそうです。
あと、警部の実家の保険屋さんはもちろん
モデルはロイズです。
四千面相の正体は・・・ひ み つ (w
ああ、アサヒ達って年がら年中茶店でだべって
居る様な気がしてきましただ。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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