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第2203話
Sereno Boy
投稿日: 2005/03/31(木) 16:36:02 ID:ApQ3oa0z
ウヨ君とアーリアちゃん
ぽかぽかと暖かい早春の昼下がり、ニホンちゃんは、タイワンちゃんと縁側でくつろいでいました。
「ふああああ、あったかーい。春だよね〜、タイワンちゃん。もうすぐ桜の季節だね〜」
「うん。おかげで昼間っから眠くて眠くて・・・」
「だめだよ、タイワンちゃん。あったかいからってボーっとしていると、またチューゴ君に唇を奪われるよ」
「にっ、ニホンちゃん!!!」
おやおや。珍しくニホンちゃんがタイワンちゃんをからかっていますね。タイワンちゃん、顔が、ゆでたこのように真っ赤になってしまいましたよ。
「あ、あんなやつ・・・、無理やり手出してきたら、ただじゃおかないから!!」
ホワイトデーの一件以来、チューゴ君はますますタイワンちゃんに熱烈なアプローチを仕掛けてくるようになりました。タイワンちゃんも、大変ですね。
『できれば今すぐにでもチューゴと袂を分かちたい。でも、それはできないよね・・・。やっぱり現状維持かな。もしかしたらチューゴのやつに、このまま流されちゃうかも・・・。いや、だめだだめだ。ここであきらめちゃ!』
タイワンちゃん、自分に言い聞かせます。
「もうすぐ学校も始まるし、またみんなに会えるね!」
「うん。でも来年度も、絶対チューゴとは付き合わないからね!」
そうそう、その意気です。タイワンちゃん。今はチューゴ君も、花火保有宣言をしたキッチョム君
を6家族会談に復帰させようと
躍起になっていますしね。
ピンポーン
「はーい!」
ニホンちゃんが、玄関のほうに向かいます。ガラガラ、玄関を開けると、そこには涙を浮かべながらたたずんでいる二人の可憐な少女の姿がありました。
「ちょ、チョゴリちゃん、ラスカちゃん、一体どうしたの?」
二人とも、悲壮な表情を浮かべています。これはただごとではありません。様子を見に来たタイワンちゃんも驚いています。
「ニホンおねえちゃんに、聞きたいことがあって・・・」
「と、とりあえず中へどうぞ・・・」
ニホンちゃん。二人をリビングに案内します。
「さ、フレッシュジュースをどうぞ。絞りたてだからおいしいよ。これはハーブ入りのクッキーだよ」
ニホンちゃん、ふたりを励まそうと、とびっきりの笑顔とおいしいおやつで二人をもてなします。
「ありがとうございます・・・」
「さあさあ、二人とも。いつまでもしょぼくれてないで、飲んだ、食べた!」
タイワンちゃんも二人を励まします。でも、一体どうしたのでしょうか?チョゴリちゃんとラスカちゃん。
「ニホンちゃん、窓開けてもいい?ちょっと暑くてさ・・・」
「あ、もちろん。でもちょっと風強いかな・・・」
「あー、いい風、ひんやりしてきもちいい〜」
あれから10分、二人は黙ったままです。
「あ、あの、チョゴリちゃん、話してくれないと分からないんだけれど・・・」
ニホンちゃん、チョゴリちゃんの顔を覗き込んで尋ねます。ラスカちゃんに至っては、今にも泣き出しそうです。
「・・・・ウヨ君は、アーリアさんと付き合っているニカ?」
「ぶっ」
タイワンちゃん、思わず口にしていたジュースを吹きだしてしまいました。
「げほっ、げほっ」
「だ、大丈夫?タイワンちゃん?」
あわててタオルを持ってきたニホンちゃん。タイワンちゃんの背中をさすります。
「あ、ありがとう・・・・っていうか、チョゴリちゃん、それ何の冗談なの?」
「冗談なんかじゃありません!」
ラスカちゃんが、耐えかねたように声を上げました。同時に、美しい瞳から堰を切ったように涙があふれ出てきます。
「わたしたち、見たんです。さっきアーリアさんとウヨ君が、肩を組んで歩いているのを・・・」
「ちょ、ちょっと泣かないで・・」
「ふぇ・・・ひっく・・・ニホンおねえちあゃん・・・・ふえぇぇぇぇん〜〜〜」
「ね、ねえラスカちゃん、それ本当の話?」
「一体どこで?あのアーリアがウヨ君とねえ?信じられない」
チョゴリちゃんとラスカちゃんは、菜の花がきれいなことで有名な、隣町の公園まで遊びにいっていたらしいのですが、その帰り道、偶然アーリアちゃんとウヨ君が肩を組んで歩いているのを見たというのです。
「武士・・・たしか今日は隣町までジョギングに行くって言っていたかな・・・天気がいいからって」
「そう言っておきながら、実はアーリアとデートだったってわけだね・・・あのガキ、堅そうに見えて案外やることやってるのね」
「やっぱりそうだったニカね・・・、ウヨ君・・・どうして・・・あんまりニダ・・・」
「ふえぇぇぇぇん〜〜ウヨ君〜〜だから・・・ひっく・・バレンタインのとき・・・ひっく・・・私にとぼけていたんだ〜〜」
「ふ、二人とも・・・。わかった。今日武士に確認しておくから、ね?泣かないで・・・・」
どうにか二人を落ち着かせて、玄関先まで送ります。
「ニホンさん、今日は済みませんでした・・。」
「いいのよ、チョゴリちゃん、気をつけて帰ってね」
「ひっく、ひっく」
ラスカちゃん、まだ泣き止みません。
「ほら、ラスカ、かえるニダ」
ニホンちゃんとタイワンちゃん、ソファーに倒れこみます。
「はああああ、くたびれた。でも、本当かなあ?チョゴリちゃんたちの話・・・」
「ウヨ君め・・・お仕置きが必要のようだね」
「ちょ、ちょっと、タイワンちゃん・・・」
タイワンちゃんの物騒な物言いに、ニホンちゃんおろおろするばかりです。
その頃、ニホンちゃんの家の前では・・・・
「アーリアさん、今日は本当にありがとうございました」
「例には及ばん、ウヨ。じゃあな」
「ではまた。あと、さっきは失礼なことを言って申し訳ありませんでした」
「気にするな、いずれ皆に認められる日が来るさ、お前の言うとおりにな」
「そうですね、いつまでもこそこそしているなんておかしいですものね」
「・・・いつか、きっと・・・」
「はい・・・・」
「るん、ただいま〜、ってええええええ」
ウヨ君が一歩玄関に足を踏み入れると、そこには阿修羅がいました・・・・タイワンちゃんです。
「ウーヨーくーんー。ずいぶんアーリアと仲がいいのね〜〜。いちゃいちゃするならよそでやってくれない?」
「あ、あの、タイワンさん。一体何を・・・・?」
ウヨ君、タイワンちゃんににらまれて、一気に凍りつきます。
「女の子ふたりも泣かせておいて、とぼける気?ウヨ君、見損なったよ。男だったらなんではっきり二人に言わなかったんだい?」
た、タイワンちゃん・・ちょっとキャラ変わってませんか?(いや、こんなもんか・・・)
「だ、だから何を・・・・」
「問答無用!奥義だけで行くよ、覚悟!!」
「どわ〜〜〜」
「ごめん〜!ウヨ君!許して、このとおりっ」
タイワンちゃん、さっきからずっとウヨ君に手をあわせて謝っています。
「ひどいですよ、タイワンさん。いきなり・・・三途の川が見えましたよ」
ウヨ君、ご機嫌斜めです。当然ですが。
「でも、武士が走って足を痛めるなんてね」
ニホンちゃん、くすくす笑いながら、ウヨ君の右足にシップをはっています。
「しかたないだろ。外が暖かくなったから、つい張り切りすぎちゃったんだよ」
そう、隣町まで走りに行ったウヨ君。帰り道で足を痛めてしまったのです。
「いたたた・・・・思ったように歩けないな・・・・」
足を引きずりながら歩いているウヨ君、そこに同じくジョギングをしていたアーリアちゃんが通りかかります。
「おや、ニホンところのウヨか?どうした?」
「あ、アーリアさん」
「捻挫でもしたのか?」
「いえ、ちょっと走って足を痛めてしまっただけです・・・」
「そうか、肩を貸す、家まで送ろう」
「い、いえ大丈夫ですよ!自分で帰れますから」
「そんな風に足をひきずってか?つべこべ言うな、ほら」
「は、はあ・・・」
「へー、アーリアちゃんらしいね。今度お礼を言っておかなくちゃ」
ニホンちゃん、アーリアちゃんが大切な弟を助けてくれたことをとても喜んでいます。
「ん〜でもなんかおかしいな?」
タイワンちゃんが口を挟みます。
「さっき、玄関先で話していた会話、みんなに認められるとか何とか・・・・」
「き、聞いていたんですか?えっと、あの、それは・・・」
あれ?ウヨ君しどろもどろになってしまいましたよ?
「ウヨ君〜〜何を隠しているのかな〜〜?お姉さんに、はくじょうしてごらんなさい〜〜」
「な、なんでもないですよ!!!」
「いいのかな〜、そんなこと言って、この前、ラスカちゃんと一緒に寝ていたかわい−い写真、学校でばら撒いちゃおっかな〜」
小悪魔タイワンちゃんの背中に、黒い翼が生えています。ウヨ君、顔が真っ青です。
「な、なんてことを・・・分かりました!白状します!」
「「ホロコースト?」」
「・・・そうです・・・」
ウヨ君、顔をうつむけて、いかにも気まずそうに話はじめました。
「ど、どういうこと?」
「実は・・・・」
「ところでウヨ、これをお前にやろう。ニホンと一緒に見に行くといい」
「・・・・なんですか、これ?」
「ナチスのホロコーストをテーマにした芝居のチケットだ、今度、アメリーの家でやるらしい」
「ちょ、ちょっと待ってください。何でそんな芝居をアーリアさんが薦めるんですか?」
「それが我がゲルマン家だ。過去を直視しなければ未来は切り開けないぞ」
アーリアちゃんの話では、ゲルマン家では幼い頃からホロコーストに関する教育を受けてきたそうです。
それだけでなく、アーリアちゃんは今、ホロコーストにあった少女の小説を読んでいるというのです。
「ホロコーストなんて、本当に信じているんですか?アーリアさん?」
「ふざけたことを言うな!ヒノモト家ではホロコーストを否定しているのか?」
ゲルマン家の家憲(家の法律)では、ホロコーストを否定することは犯罪です。
でもウヨ君、そのゲルマン家のやり方に関して、以前から疑問を持っていたのでした。
「ナッチ会が、ユダヤ人絶滅計画なんて立てるはずがない。命令書すら存在しないのに・・・、
第一歴史の見直しすら家憲で禁じられているなんて絶対間違っています!」
「むう・・・」
「ちょ、ちょっと、ウヨ君?あんたホロコースト信じていないの?」
「・・・・はい」
「た、武士、いくらなんでもそれは・・・」
「同じなんですよ」
「「へ?」」
「だから、紫苑さんは、カンコやチューゴと同じなんですよ!」
「あ・・・・」
つまり、ウヨ君が言うには、ゲルマンの家憲で歴史資料の見直しさえ禁じられているというのはおかしいというのです。
「ニッテイおじいちゃんがカンコ家の女の人に無理やりいやらしいことをしたって言っても、証拠がなければどうしようもない。でも、ゲルマン家では、
ガス室はなかった、ホロコーストはなかったといっただけで座敷牢に放り込まれるんだ。まるで大昔のユーロ町の魔女裁判だよ」
「むぅーーー。でもさ、有名な話じゃない。600万人のユダヤ人がユーロ町中で殺されたって・・」
「じゃあ、タイワンさんは、ニッテイおじいちゃんがチューゴ家で30万人殺したって信じてるんですか・・?」
「いや、ニッテイさんがそんなことするはずないよ。うちの恩人だもの。第一、何一つ証拠がないじゃない」
「そう、ホロコーストもです。でも、アーリアさんは、ゲルマン家で、タイワンさんのような発言をすることはできません。そんなことをすれば座敷牢に入れられてしまいます。
ホロコーストに関する証拠があるなら、どうして家憲で歴史資料の見直しすら禁止しているんですか?おかしいでしょう?」
「武士・・・、そんなことをアーリアちゃんに言ったの、あんたは・・・」
「はい・・・・。助けてもらっておいて、馬鹿なことを言ってしまったなって・・・。だから言いたくなかったんだよ!」
ニホンちゃんとタイワンちゃんは納得した。
「でもなんか悲しくなっちゃって・・・。やってもいない罪で、紫苑さんがアメリーまで巻き込んでゲルマン家を追い詰めている。しかもゲルマン家は反論すらできないんだ・・・。アーリアさんが自分から
ホロコーストの芝居を姉さんと見に行けと言うなんて・・・」
ニホンちゃんはウヨ君の気持ちが痛いほど分かった。もしもカンコ君とチューゴ君たちの主張するニッテイおじいちゃんの「犯罪」を、否定することさえ罪になってしまうとしたら・・・。
「たとえ将来、座敷牢に放り込まれることになるとしても、俺は姉さんとニッテイおじいちゃんの名誉を守る!」
ウヨ君は、澄んだ瞳でニホンちゃんを見据えながら、そう言い切りました。
「んんん〜〜〜。えらいっ、ウヨ君!」
タイワンちゃん、ウヨ君の背中をバシバシたたきながら言いました。
「た、タイワンさん?」
「よく言った!それでこそ男だ!カンコやチューゴなんかに負けるな!」
「はい、僕は姉さんを決死の覚悟で守ります!」
「よし!今日は飲むわよ〜」
「はい!」
「って、ちょっとタイワンちゃん、飲むって・・・」
「よし、ウヨ君!今日からあたしたちは義兄弟だ!杯交わそう!これからも、わたしたちのニホンちゃんをカンコやチューゴには指一本触れさせないよ〜」
「はい、タイワン姉さん!」
「ちょっと二人とも〜、話聞いてよ〜」
「「きっさまーとおーれとは、どうきのさーくーらー」」
「ちょっと〜、おいていかないで〜」
こうしウヨ君とタイワンちゃんは、アジア町の繁華街で繰り出していったのでした(おい)
おしまい
おまけ
「全くもう・・・。でもホロコーストはなかったなんて、考えもしなかったな・・・。今度調べてみよっと。」
「そういえば、チョゴリちゃんとラスカちゃん、大丈夫かな?」
つづく・・・・かな?
解説
Sereno Boy
投稿日: 2005/03/31(木) 17:04:14 ID:ApQ3oa0z
ハングル板の皆様。はじめまして。Sereno Boyと申します。
3日前にはじめてニホンちゃんの存在を知りましたが、
あまりの面白さに寝るのも忘れて読み進めてしまいました。
厚かましいとは思いつつも、投稿させていただきました。
今回のエピソード、ご批判も多々あるとは思います。
実は昨日、アメリカの大学で実際に経験したことです。
未熟者ではございますが、ご指導いただければ幸いです。
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