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第2208話
黄 色 い リ ボ ン ◆JBaU1YC3sE
投稿日: 2005/04/07(木) 11:26:41 ID:4A0cuWN2
「 最強の戦艦よ、やすらかに 」
今年も桜の季節がやってきました。
今日は日之本家の桜の名所、ニッテイさんのお宮にお客さんが来ています。
なんと、かつてのニッテイさんの喧嘩相手の子孫、
アメリー君、ラスカちゃん、エリザベスちゃんです。
「いつ来てもきれいだなあ、ここの桜は」
いつになく大人しめなアメリー君、今日は白の詰襟を着ています。
意外とアメリー家の人は、どの家より多くここに来ているのです。
「アメリーさん、よく来てくれて嬉しいです」
ウヨ君は感激してアメリー君を見上げました。アメリー君と服がお揃いですね。
「パトリオットとして当然さ」
笑顔で答えるアメリー君。そんな2人をラスカちゃんは嬉しそうに見ています。
今日は女の子は3人とも白のセーラー服です。
「4月7日はカイグンさんの・・・。だから満開なのかも知れませんわね」
「よく知ってるね、エリザベスちゃん・・・」
ニホンちゃんはそう言うと満開の桜に目をやりました。
「何があったの?」無邪気に聞くラスカちゃんにニホンちゃんが話し始めました。
かつて大喧嘩最後の年、日之本家は凄惨な戦いをしていました。
その年の4月、進攻を受けたリュー君を救おうと、
カイグンさんの部下たちが最後の艦隊で出撃、アメリー家の350機の大軍と戦い、
壮絶な最期を遂げたのです。
それが4月7日のことでした。
「そんな・・・勝てないのに、どうして?」
するとエリザベスちゃんが言いました。
「ラスカさん、英雄的な敗北は偉大な勝利より素晴らしいのよ」
この言葉を聞いてニホンちゃんは驚きました。エリザベスちゃんは続けました。
「死ぬとわかっていても、喜んで戦いに赴くのは我が家と日之本家の人間だけかしら」
アメリー君がつっこみました。
「どうしたベス、ベスらしくないじゃない」
「おばあ様からこんな手紙のことを教えてもらったからかもね」
そう言ってエリザベスちゃんは、1冊の本を取り出し、声に出して読みました。
それはカイグンさんが、奥さんと未来のニホンちゃんにあてて書き残した手紙の一節でした。
『もっと幸せにしたかった。
至らない私を、あなたは申し分ないほど幸せにしてくれた。ありがとう。
サクラちゃん、大きくなったら私の奥さんのような人になってね』
ウヨ君は感動と驚きで言葉を失いました。
( 勝負事ではことのほか口が悪いと聞いていたビクトリアさんが!? 敵のいい面を? )
ふと見ると、ニホンちゃんがみんなに背を向けて肩を震わせています。
読み終えたエリザベスちゃんも、ちょっぴり目に涙を浮かべています。
「さあ、行きませんこと?」
無言でうなずくニホンちゃん。みんなで桜の舞う本殿へと向かいます。
やわらかな春の風が枝を揺らし、小さな参拝者達を優しく包むのでした。
おしまい
解説
黄 色 い リ ボ ン ◆JBaU1YC3sE
投稿日: 2005/04/07(木) 11:40:06 ID:4A0cuWN2
4月7日は戦艦大和撃沈の日です。
巡洋艦矢作、駆逐艦浜風、朝霜もともに撃沈、磯風、霞は大破の末、処分されています。
戦死3721名です。
え?エリザベスちゃんのキャラが違う?いえいえ、このような一面もあるのです。
以下ソース
「戦艦大和の運命」ラッセル・スパー(イギリス人)著 新潮社 昭和62年
原題「A GRORIOUS WAY TO DIE」Russell Spurr 1981
( 楠 正成の歴史を解説した後 )
「絶望的だということが使命に対していっそう輝きを添える
敗れると分かっている戦いを喜んで戦うのは、
英国人と同じく日本人が持つ特質である」P171より
「英雄的な敗北を偉大な勝利以上に高く評価する国は、世界で英国と日本だけに違いない」
P326より
カイグンさんの遺書は
第2艦隊司令長官伊藤整一中将の遺書の一節
「大きくなったらお母さんの様な婦人になりなさい」上掲スパー著作P173より
最後の艦長有賀幸作大佐の遺書の一節
「遇することの薄かりしにかかわらず、仕うることの申し分なかりしと深謝す」
「提督伊藤整一の生涯」吉田満 著P217より
以上の二つを合わせました。
あらためて、英霊に深く感謝し、末永く語りついで行きたいと思います。
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