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第2375話 黄 色 い リ ボ ン ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2005/11/05(土) 01:57:24 ID:LhVF1BZl
   「 餃 子 大 戦 」
 今日の授業はお料理実習です。
 何を作るかというと、地球町に色々な名前で広まっている料理、
 餃子を課題として、それぞれの家の料理法で作ることになりました。
 ただ、餃子と呼ぶのは意外と日之本家だけで、他の家では名前が違うようです。
「これの名前はゴーティエいうアルヨ。ウチの祖先が名づけた由緒正しい名前アル」
「違うニダ、チューゴ君。その人はチューゴ家で活躍したけどウリナラの人ニダ。
 だからウリナラのマンドゥが正しいニダ!料理宗主国マンセー!」
「もう一度言ってみるヨロシ!朕の包丁が見えないアルか!」
 2人をマカロニーノ君とアテネちゃんがなだめました。
「おいおい、料理におかしなケチャップが入るから止めてくれよ」
「誰の祖先でもいいじゃない。一番美味しいマンディを作れば」
 そこへトル子ちゃんが加わりました。
「だいたい2人とも間違ってるわよ。オスマン堂のマントゥが正しいんだから」
「トル子、伝統ある我が家の料理にケチをつけるアルか?」
「あら、伝統を壊すことだけがあなたの伝統じゃないの?
 それに一番古いマントゥ作りの遺跡って
 うちの祖先がいたところで見つかってるでしょ?」
(まずいアル!知っていたアルか・・・)
「待つニダ!トル子、遺跡ぐらい、そのうちすぐに宗主国たるウリナラで見つかるニダ!」
 そんなカンコ君をスルーして、トル子ちゃんはチューゴ君に言いました。
「カンコすら納得していないのに、私があんたの言うこと聞くわけないでしょ。
 その点、我がオスマン堂はユーロ町に料理を教えてあげたくらいだもの。そうよね?」
 トル子ちゃんは、アテネちゃんとマカロニーノ君に視線を送りました。
「む、昔のことなんかに関係なくあたしはマンディが好きなの!ほっといてよ」
「本当にトル子ちゃんの料理は最高だよ。でも僕が一番食べたいのは(ry」
「反抗されたり、慕われたり、教える者は辛いわ〜」
 トル子ちゃん、優越感満面でチューゴ君に流し目を送ります。
「だからウリナラのマンドゥと名前が似てるってことはやっぱりウリナ(ry」
「うるさいアル!」
( ははーん、こいつ自分でも知らないんだ )
 全員がそれを察して冷たい沈黙が。ニホンちゃんは気まずそうに言いました。
「ねえ、チューゴ君、古い物の名前って意味があると思うの。
 作った人の気持ちがこもっているんじゃないかな?だからわたしは変えたくないのよ。
 餃子を作った人たちのために」
 そこへフラメンコ先生がやって来ました。
「その通りよ、チューゴ君。簡単に名前を変えると後になって後悔するわよ。
 それにチューゴ君の家で無くなったものが、ニホンちゃんの家に残っていて、
 助かったことも沢山あるでしょ」
「先生、何故そういうことを堂々人前で口にするアルか!
 大体ニホンの一家は物覚えが良すぎアルヨ!」
 トル子ちゃんすかさず突っ込みます。
「あら、いつも言ってることと反対ね。物覚えのいいこと」
「もういいアル!朕は向こうでゴーティエ食べるアル!」
「ニホンちゃん、私達は一緒にマントゥ食べましょ。アメリー君もどう?」
「お、嬉しいなあ。朝ごはんを少なめにしてきてよかったよ」
 両手に花のアメリー君と両脇の2人を、チューゴ君は無言で睨み付けました。
(あの顔ぶれ、気に入らないアル!今日は宗主国としてモテモテの予定だったアルに!)
 そんなチューゴ君にも優しいフォローの手が。
「チューゴ君、仲良くマンドゥを食べようじゃないニカ。伝統ある家同士」
「うるさいアル!」

  ―――その日の夕方―――
 ニホンちゃんは縁側で、夕焼け空を見上げて学校でのことを思い出していました。
「みんなで楽しく餃子を食べる日だと思っていたのになあ」
 そんなことを考えて、空を見上げていると
 星が一つ、強く輝いているのが目に留まりました。おや?動いています。
 飛行機?いえ、違います。その光は見る見る大きくなって、
 こちらに向かって来るではありませんか!
 なんと、それは天空を駆ける一騎の騎馬武者です!
 チューゴ君か、モンゴル君の家の昔話に出てくるような甲冑に夕日を受けて、
 自らも不思議な光を放つその人は、ニホンちゃんに向かって突進してきました。
 あまりのことに声も出ないニホンちゃん。騎馬武者はもうすぐそこに迫ってきました。
 騎馬武者は荒ぶる馬を鎮めると、身を翻して馬を下り、こちらに近付いて来ました。
 その顔には、雄々しさと、優しさと、そして感謝の色が浮かんでいました。
 何故か、ニホンちゃんには恐怖心は浮かんできませんでした。
 不思議と懐かしさが浮かんでくるのを感じました。
(この人、私を知ってるの?私もこの人に会ったことが?)
 その人はニホンちゃんに歩み寄り、そして優しく抱きしめて、耳元で言いました。
「今日は嬉しかったよ、ニホンちゃん。その気持ち、いつまでも忘れないでね」
 そう言って少し体を離すと、脇に目をやりました。
 そこには、大皿に山盛りの焼き餃子が湯気を立てているではありませんか。
「ほら、たくさん召し上がれ」
「わあ、おいしそう―――――」

「――――はっ」
 ニホンちゃんは目を覚ましました。周りには誰もいません。
 どうやら夕暮れの縁側でうたた寝していたようです。
「夢?なんかリアルな夢だったなあ。でもあの人って、一体?」
 そこへニホンちゃんを呼ぶ、お母さんの声がしました。
「さくらー、晩ごはんできたわよー!あなたの好きな餃子がたっぷり出来たからねー」
「え!餃子?!」
 夕空高く、一番星がいつもよりも強く輝いていました。

  おしまい
 そう言ってカンコ君の口に小麦粉の固まりを押し込むと、
 チューゴ君は話に参加していなかったニホンちゃんに目をやりました。
「ニホン!ニホンならわかるアルな?我がチューゴ家の歴史が!
 ゴーティエが正しいアルな?」
 しかし、トル子ちゃんが話をさえぎりました。
「日之本家が他所の物を受け入れてやったってことね。
 ニッテイさんがアジア町をシメていた頃に」
「トル子ちゃんてば!」
 ニホンちゃんがびっくりしていると、意外にもアメリー君が話しに加わりました。
「気にするなよニホンちゃん。栄えている家と付き合ってもらうことで、
 貧しい家の人間もやっと食い扶持にありつけるんだからさ。
 他所の物が沢山集まることは家の力の目安だってこと。
 オスマン堂の過去を考えれば、トル子ちゃんは人並み以上に言う資格があるだろ?
 受け入れてくれる家に感謝しないようじゃ、食いっぱぐれるってことだってあるぜ」
 アメリー君の言葉に周りはシーンとなりました。トル子ちゃんを除いて。
「あたしうれしい!やっぱりチャンピオンね!
 起源ではあっても、今は野蛮な家の人たちとは違うわ〜」
 この言葉は辺りを一層凍りつかせましたが、アメリー君は鼻高々です。
( どうしたの?今日のトル子ちゃんは )
 そう思いつつも、ニホンちゃんは丸く治めようと頑張ります。
「食べる時くらい仲良くしようよ、ね?
 餃子がチューゴ君の家から伝わったことは認めてるから」
「餃子じゃないアル!ゴーティエ、アル!ニホンは侵略の歴史を反省していないアル!
 食べ物の名前は全て宗、いや被害者たるチューゴ家にあわせるアル!」
 トル子ちゃんがまたもさえぎりました。
「全然名前が似てないじゃない。
 大方ニホンちゃんが作った方がずうっと美味しいんでしょ。第一不潔じゃないし」
 ニホンちゃんは、なおも作り笑顔をして、必死に話題をそらそうとしました。
「そういえばチューゴ君、餃子ってどんな意味なの?知らなくて気になってたんだあ」
 おや?何故かチューゴ君は黙ってしまいました。

解説 解 説 投稿日: 2005/11/05(土) 02:21:19 ID:LhVF1BZl
餃子という名は満州語です。北京語では焼き餃子は鍋貼・ゴーティエです。
「大清帝国」石橋崇雄著 講談社選書メチエ刊 より
東トルキスタンで餃子が唐の頃に作られていた遺跡が発見されています。
http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/LecRep/01/IntroHum/gyoza.htm
http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/china/silkroad/gyoza.htm 画像付
トルコのマントゥ
http://allabout.co.jp/gourmet/ethnicfood/closeup/CU20030225A/index2.htm
ギリシャのマンディ
http://blog.livedoor.jp/sevam_a/archives/29271666.html
ウリナラの饅頭( マンドゥ )と孔明
http://japanese.whatsonkorea.com/main.ph?code=N&scode=N-30&pst=L
日本の餃子は宇都宮第14師団が持ち帰ったもの
http://www.geocities.jp/bokuookokomo/gyouza13.htm
フラメンコ先生の家には、以下のような過去があります。
植民地から伝わったバーベキュー ジャマイカ共和国
http://www.iadb.org/japan/IDB%20Japan/2004/9_3/amigo2.html
満州人の帝国 清の始祖 ヌルハチの伝説
http://asianblue.info/zhongguo/fubu_soturon03.htm
満州族 八旗軍の甲冑
http://www.geocities.jp/intelljp/manju/shin/8flag/index.htm
失われる満州語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%80%E5%B7%9E%E8%AA%9E
カリブの民族に訪れた悲劇が満州人にも起こり、今、東トルキスタンにも迫っています。
http://uygur.fc2web.com/uygur.index.html
真の平和を願う皆様、上記のサイトにある通り
東トルキスタン亡命政府では寄付金を募っています。どうぞよろしくお願いします。

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