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第2468話
マンセー名無しさん
投稿日: 2005/12/30(金) 13:19:05 ID:tLAlosVi
フィンラン祭に便乗。
前スレ
>>681
>>683
『トナカイ酒』の続き。
その巨大な水槽はなみなみとウオツカに満たされていました。横2.5m×奥行2.5m×縦3mの強化アクリル製の
水族館ばりの大水槽に立派な体格の雄トナカイが白目を剥いて浮かんでいました。
幾重にも枝分かれした角が水槽に収まりきらず、ウオツカの水面上に飛び出していました。水槽とウオツカと
トナカイ、全部ひっくるめて十数トンに及ぼうとする代物を大八車で引いてくる小学生は『彼』くらいのもの
でした。
「うわー! ロシアノ、何デスかこれは?」
水色のコートに長い金髪を垂らしたフィンランちゃんが目を丸くして聞きました。
「ロシア名物トナカイ酒だ! ロシア人は冬になると皆これを飲む。冬の風物詩なんだぞ」
「本当デースカー?」
胡散臭そうに迫られたロシアノビッチ君はあっさり嘘を認めました。
「じつはいま作った。でも美味かったら新しい名物にする。きっとアレだ、トナカイのエキスが健康にいいぞ。
マムシ酒みたいなもんさ」
「フーン」
「さあ、呑め」
「死んでも厭デース♪」
「ちぇっ、ノリの悪い女だぜ。いいさ、俺様だけで呑む」
ぶつくさこぼしながら、ロシアノビッチ君は脚立を掛けて水槽の縁によじ登りました。酒の水面には泥だの蚤だ
の埃だのトナカイの死骸から出たものがたくさん浮いていました。
彼はそのまま頭をウオツカの海につっこんで喉を鳴らしました。
ぐびりぐびりと、いい音がしました。ほんの2、3秒だけですが。
「うぼあっ!!」
ロシアノビッチ君は激しく咳きこんで水槽を転がり落ちました。げえげえ吐いて転がりまわり、やがて人心地が
つくと水槽をぶん殴って叫びました。
「うぇーっぷ! げ、げほげほ。何だこりゃあ、とても呑めたもんじゃねえっ! まるで泥水だ!」
「というか泥水以外のなにものでもないデス全裸で森林浴〜〜」
「こら、奇声を上げるな。――しかし始末に困ったな。どうしようもねえぞ、これ」
「捨てればいいじゃないスカー」
「ウオツカを1万8千リットルも注いだんだぞ? 絶対に有効活用してやる」
ロシアノビッチ君は胡坐をかいて座りこみました。腕を組んで目を瞑り、考えることを苦手とする脳髄をフル回転
させました。
『北方領土の替わりにニホンちゃんに売りつける』
『秘伝の珍味と偽ってチューゴ君に売りつける』
『味覚を持たないエリザベスちゃんに売りつける』
等々使えないアイディアがあぶくのように浮かんでは消えました。
…………。
「よし、こうしよう!」
長い時間ののちにロシアノビッチ君は手を叩きました。
何のことはない、一番嫌いな人間に押し付ければいいのでした。
「アメリーに売りつけよう。あいつは大きいものなら何でも好きだからきっと喜ぶ。100万ドルくらいふんだくって
やるぞうはははは」
難問が解決して、晴れやかな表情でロシアノビッチ君は大八車のハンドルを取りました。あとはアメリカまでこの
グロいオブジェを運ぶだけでした。
「よーし、それじゃ行くぞ! フィンラン、後ろを押せ」
「ほーい。100万ドルドルキシリトール!」
「奇声を上げるなっつーの」
かくして、極北コンビは大騒ぎしながら西へ向けて巨大な大八車を走らせるのでした。
アメリカにたどり着いた二人はそろってアメリー君にコテンパンに怒られるのですが、それはまた別の話になります。
完
フィンラン画像はこれ。
ttp://mrcopa.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/amtrs000/nihontan/illust/nii/finlan.jpg
私の中ではお目々ぐるぐるで唐突に奇声を上げるのがフィンランちゃんなのです。
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