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第2491話
三毛 ◆MowPntKTsQ
投稿日: 2006/01/30(月) 20:30:03 ID:NqVDqV1L
「フローチャート」
CASE-1 それは良いものか?
「やっぱニホンちゃんちのマンガが一番面白いよな」
「うむ。単純明快な勧善懲悪にはならないところが興味深い」
「モノにもよるけど、下手な小説より内容が深いものもありますわね」
五年地球組のみんなが集まって、なにやら騒いでいます。その輪の中には、山のような漫画本。
みんな、こっそり持ち寄った漫画を回し読みしているようですね。
一番人気は、やはり日ノ本家のマンガ。独自の進化を遂げたその表現手法や、複雑なストーリー展開に魅せ
られる人も多いようです。その一方で、過激な姓描写や暴力描写などが批判されることも多いのですが。
とまれ、マンガはおおむね好評のようです。しかし、そうなると不機嫌になる人物が約一名。そう、彼です。
輪から外れて、我関せずのポーズをとっているカンコ君。しかし、その実全身を耳にしていたりします。なにしろ、
彼も一応漫画を描いているのですから。マンファというそれの評価を知りたくてたまらないようです。
が、しかし。聞こえてくるのはマンガへの賛辞ばかり、マンファのファの字すら出てきません。カンコ君の表情が、
どんどん険しくなり、顔面がキムチ色に染まり、こめかみに静脈が浮き出します。
ついに我慢しきれなくなったカンコ君。椅子をけたたましく蹴倒して立ち上がりました。と、その瞬間。
「カンコは、『マンガの起源はウリの家のマンファニダ!マンガはマンファのパクリニダ!』……と言う」
冷静で、意外なほどよく通る声が、皆の耳に届きました。その声を追いかけるように、カンコ君が喚きます。
「マンガの起源はウリの家のマンファニダ!マンガはマンファのパクリ………へ?」
驚きに彩られた視線が、一人の少年に注がれました。無理もありません。まったく同じ台詞を、本人より先に
言い当てて見せたのですから。
その少年―――カナディアン君は、久しぶりに浴びた注目に、くすぐったそうな笑みを浮かべるだけです。
一方、自分の発言を見事にスルーされてしまったカンコ君は、寂しそうに「アイゴォ…」と呟くのでした。
CASE-2 誰か目下のせいにできるか?
静かな教室に、鉛筆を走らせる音だけが響きます。
今日の授業は、作文。冬休みの出来事を作文にする、という課題に、みんなまじめに取り組んでいるようですね。
で、フラメンコ先生は何をしているかというと、回収した冬休みの宿題を一心不乱にチェック中です。なかなかどう
して、普段ハジけている割には、立派な先生ぶりです。………………が。
「カンコ君っ!ちょっと前にきなさいっ!!」
突然、すさまじい怒声が、先生の唇からほとばしりました。驚いたみんなの視線が集まるなかで、顔を蒼白にした
カンコ君がおどおどと立ち上がります。
「なんなの、このノートは!?答えがみんなデタラメじゃないの!大体、算数の計算で式を書かずに答えだけ書く人
がどこにいますか!」
どうやらカンコ君、宿題をあてずっぽうで片付けていたようです。
(大方、始業式前日に大慌てで答えだけ埋めたんだろうな………)
みんなの感想が見事に一致。ビンゴだったりします。
さて、怒りの矢面に立たされたカンコ君、顔色を壊れた信号機のようにめまぐるしく変えながら、必死に言い訳を
考えているようです。なにせ、このままだと、愛と情熱に満ちたお仕置きが待っているのですから。
やがて、なにやら思いついたのか、カンコ君が愁眉を開きます。と同時に、カナディアン君がボソッと呟きました。
「カンコは、『ウリはちゃんとやったニダ!ノートをチョゴリがすり替えたニダ!悪いのはチョゴリニダ!』……と言う」
「ウリはちゃんとやったニダ!ノートをチョゴリがすり替えたニダ!悪いのはチョゴリ………はえ?」
一語一句違えずにトレースしてみせるカンコ君。注目の的になるカナディアン君。そして――――何故か、慈母の
笑みを浮かべるフラメンコ先生。
「ああ、そうなの。チョゴリちゃんが………。それじゃ仕方ないわねぇ………」
言い訳が通じたのだと思ったのでしょう。啄木鳥顔負けの勢いでヘッドバンキングするカンコ君。しかし、慈母は
鬼子母神だったようです。
「んなわけあるかーーーっ!!あ、あんたって子は、言い訳だけならまだしも、よりによって妹になすりつけるなんて
…………今度という今度は許しません!その性根叩きなおしてやります!みんな、以後自習!放課後まで戻って
こないかもしれないけど、おとなしくしてるんですよ!」
「ア……アーーーーイーーーーゴーーーーオオォォォォォォーーーーッ!」
床を踏み抜きかねない勢いの足音と、悲痛な泣き声を残して、二人は教室から姿を消したのでした。
…………なお、この日のホームルームは、ハプスブルク先生が代理で勤めることと相成りました。
CASE-3 地球町大喧嘩の前か?
「なあ、カンコ。なんでカンコの家って、庭が荒れ放題なんダスか?」
不意に、オージー君がカンコ君に問いかけました。でも、カンコ君は質問の意味をよく理解してないようです。
「…………?荒れ放題って、どういう意味ニカ?」
「いやだから、ろくに木も花もなくって、土むき出しなのはどうしてなのかと思ったダスよ。なんでダスか?」
オージー君は、心底不思議そうです。ニホンちゃんの家の庭は、それはそれは見事な緑したたる空間になってる
だけに、その較差が気になっているのです。
カンコ君、その比較対照に気づいたのでしょうか。屈辱に顔を赤らめます。ワナワナと震えながら口を開こうとする
その刹那。
「カンコは、『ウリナラの庭はニッテイに荒らされたニダ!悪いのはニッテイニダ!』………と言う」
「ウリナラの庭はニッテイに荒らされたニダ!悪いのはニッテイ……んあ!?」
またまたカンコ君の台詞を先取りするカナディアン君。ぼーぜんとするカンコ君。目を丸くするオージー君。
「あ……えーーと、ニッテイ氏は、わざわざ庭師を呼んで、カンコの家の庭整備したって聞いたダスが……………。
つか、それって何年前の話ダスか。本当なら、とっくのとうに元通りになってしかるべきだと思うダスが」
「む、ぐ…………!」
意外と鮮やかなオージー君の切り返しに、咄嗟の反論が出来ないカンコ君です。
おつむの中で必死に理論武装をして、さあ準備完了、いざ反撃というまさにそのとき。
「次にカンコは、『直したけどアメリーが暴れまわったから荒れたニダ!悪いのはアメリーニダ!』………と言う」
「直したけどアメリーが暴れまわったから荒れたニダ!悪いのはアメリー………アイゴー!」
またもやカナディアン君に先回りされたカンコ君。もはや悲鳴しか出ません。
「…………だから、それだって大昔の話じゃないダスか。そもそも最初に暴れたのキッチョムだし。正直、あの庭は
見苦しいダスよ」
オージー君、結構言いたい放題言ってます。二の句が継げないカンコ君は、力なく「アイゴォ……」と漏らすだけなの
でした。
☆
「なあカナディアン。最近お前、すげーな」
「ん?すごいって何が?」
「何がって、カンコだよカンコ!なんであいつの言うことが事前に分かるんだ?ひょっとして予知能力?それとも、どこか
でラベンダーの匂いでも嗅いだのか?」
興奮気味にまくし立てるアメリー君。「まさか、思考パターンがカンコと一緒なのか?」と続けようとしたのは内緒です。
「あはは、そんなんじゃないよ。ただ、あいつの答え方にはパターンがあるからさ。予測は難しくないよ」
そういうと、カナディアン君は、ノートになにやら書き付けました。覗き込むアメリー君。興味を引かれたのか、周りの
みんなもわらわらと集まってきます。
カナディアン君の書いたそれは、フローチャートでした。
それは良いものか?
Yes → それはカンコの家が起源です。【終了】
No → それを誰か目下の者のせいにできるか?
Yes → 問題解決。【終了】
No → それは地球町大喧嘩以前に起きたものか?
Yes → それはニホンちゃん(ニッテイさん)のせい。【終了】
No → それはアメリー君のせい。【終了】
『……………………………………』
呆れたような、笑いをこらえるような、何ともいえない沈黙が、その場を支配します。
「なんと言うか………シンプルなことこの上ないな」
「うむ、三歳児でも、もう少し複雑な思考ルーチンをしていると思う」
容赦ないゲルマッハ兄妹の論評。さらにタイワンちゃんが追い討ち。
「でも、考えてみりゃ確かにこのとおりよね。途中でこねくり回す屁理屈が斜め上なだけで、結論はこの四通りだし」
と、ここで、アーリアちゃんがしたり顔でペンをとりました。
「でも、一つだけ欠点があるな。ここをこうすれば………うん、完璧だ」
彼女が追加した一文。それは、最後の処理を少しだけ改変したものでした。
No → それはニホンちゃんもしくはアメリー君のせい。【終了】
「別に最近のことは、みんなアメリーのせいにするわけじゃない……というか、ニホンのせいにしまくってるからな、あいつは。
あ、もちろん優先順位も、ニホン、アメリーの順だ」
「うう………結局、どう転んでもわたしに八つ当たりがくるんだね…………」
がっくりと肩を落としてうめくニホンちゃん。その肩をぽんぽんと叩いて、タイワンちゃんが慰めます。
「まあ、バカンコが隣に住んでるのが運のつきってことで……。ここはひとつ、野良犬に噛まれたとでも思って」
「本気でお引越ししたいよ…………っていうか、イヤな慰め方しないで」
「みんな揃って何の話ニカ?」
話題の主、カンコ君が近寄ってきました。みんなは何食わぬ顔で、『別にぃ〜』と誤魔化しますが、こういうところで無駄に
勘のいいカンコ君、即座に沸騰します。
「さては、みんなでウリの悪口言ってたニダな!?」
理性ではなく、感情と邪推で正解に到達したカンコ君、血走った目で、一同を睨みまわします。その視線が、一点で止まり
ました。
『カンコは、『ニホンがウリの悪口吹き込んでるニダな!ニホンは謝罪しる!』……と言う」!』
「ニホンがウリの悪口吹き込んでるニダな!ニホンは謝罪し……げげっ!?」
笑い声が爆発します。
ものの見事に、全員からカウンターを浴びたカンコ君。頭の中はパニック状態、もう何がなんだか分かりません。ここで出てくる
お約束を口走ろうとしたそのタイミングで、さらに追い討ち。
『次にカンコは、『アイゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!』と叫ぶ!』
「ア……アイゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
さらなる笑い声と、決め台詞まで先取りされてしまったカンコ君の歎声が、冬空に響き渡るのでした。
おしまい
解説
三毛 ◆MowPntKTsQ
投稿日: 2006/01/30(月) 20:37:49 ID:NqVDqV1L
ソースっつか元ネタ。
カナダ人謹製、「韓国人の思考パターンフローチャート」
http://keneckert.com/other/problem-flowchart.jpg
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