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第2508話 黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2006/04/23(日) 14:23:10 ID:39wEsLI9
   「 鯉じゃだめなの? 」
 地球町もすっかり暖かくなってきました。
 ニホンちゃんがポーラちゃんを家に誘っています。
「ねえポーラちゃん、あたしの家に来ない?
 鯉のぼりっていう、布で出来た大きな鯉を飾るの」
「へ〜、大きな鯉を飾るんだ。あたしの帽子についてる飾り、ちょっと似てるでしょ」
 ポーラちゃんの帽子には、かわいい人魚の刺繍が付いています
「かわいい!あ、隣には白い鳥さんの飾りだ」
「白い鷲よ。こっちは家の紋章だもん」
(人魚と鷲?どうしてこの組み合わせ?)
 それを聞こうとしたところへ、チューゴ君がやってきました。
「5月5日は我がチューゴ家の伝統、端午の節句アル。鯉が難関を越えて
 龍になることにあやかったものアルネ。だが日之本家はおかしいアルヨ」
「え、どこが?」
 ニホンちゃんは聞きました。
「何故大きな鯉なんか飾るアルカ?龍にならないと意味ないアルヨ。
 鯉で終わるか、龍になるかが、人生の勝負アル。朕が飾るなら龍にするアルネ」
 ニホンちゃんは言いました。
「龍も強そうでいいけどさ、鯉だって綺麗だよ。
 鯉が偉く前の象徴だとしたら、将来偉くなっても、
 あの子が偉くなった、て思うんじゃないかな。こどもの日は鯉がいいよ」
 するとチューゴ君の表情が曇りました。
「強くなければ意味が無いアルネ。それを子供の頃からしっかりわかっておくべきアル。
 それに偉くなったら昔の話などさせないアルヨ。
 天の定めで偉くなった、これで決まりアル」
「でも、龍も元は鯉だったって思えば、他の人の励みにもなるし」
「まだ言うアルカ。龍は龍、鯉は鯉アル。強く大きくならなきゃ意味がないアル。
 ただの龍未満なんか無意味アル」
 そこへモンゴル君がやってきました。
「ニホンちゃんには綺麗な錦鯉が似合っているよ。どこかの雑魚と違ってね」
「誰のことアルカ!」
 チューゴ君の声には震えがありました。
「質より量の誰かさんのことさ。あえて言わないけど」
 おや?チューゴ君、顔が真っ青です。震えているではありませんか。
「ち、朕はアジア班のリーダーアル。りゅ、龍に象徴されるような」
 随分と小さな声で言い返しました。モンゴル君はいつになく冷笑的に答えます。
「天を名乗るだけなら誰でも出来るさ。負けて取り消しにされるまでは、誰でもね。
 ニホンちゃんが竜神に守られているって言うならともかく、君が言うんじゃなあ」
 おや?向こうでポーラちゃんがニホンちゃんに無言で手招きしています。
 ニホンちゃんはその場を離れてポーラちゃんのところに来ました。
「なあに、ポーラちゃん」
「ねえ、ニホンちゃん、ニホンちゃんは家無き子になったこと無いよね。
 親子兄弟そろって下働きしたこととかさ」
 ニホンちゃんは急に何の話かと思いましが、答えました。
「最近ね、うちのアサヒちゃんが日之本家はまるでアメリー君の家のペットだって言うの」
 ポーラちゃんはガックリと肩を落としました。
「そんなものじゃないわよ。下働きを長いことやらされる人生って」
 そして少し間をおいて、俯きながら小さい声で言いました。
「私にはね、チューゴ君の言うことが良くわかるの」
「ええ?」
「ユーロ班のみんなも同じだと思うよ。強くなかったばっかりにどんな目にあうか。
 守られたい、強い家に生まれてさえいればって思ったことが、誰でも」
 ポーラちゃんは言葉をつまらせました。ニホンちゃんは驚き、慌てて言いました。
「ごめんポーラちゃん!私、そんなポーラちゃんの気持ちに気づいてなかった。
 だけど私達は幼馴染よ。いつでも日之本家に来れば、
 ううん、ポーラちゃんの家が乗っ取られる事なんか、もう絶対に無いわ!」
「ありがとうニホンちゃん」
 ポーラちゃんは力なく答えました。ニホンちゃんはポーラちゃんの機嫌を直そうと、
 必死に知恵を絞りました。ええと、ええと・・・
「そうだ!ポーラちゃん、柏餅って食べたことある?」
「ないけど、柏餅ってなあに?」
「ちょうど今の季節に食べるのよ!甘くておいしいの!
 これからうちで食べない?」
「甘いもの大好き!ご馳走になるわ!
 それとさっきの鯉のぼりだけどね、あたしもやっぱり、
 強いものより綺麗なものの飾りの方がいいわ。見てみたいな」
 ポーラちゃん、ふんわりした優しい笑顔を取り戻しました。
 それを見てニホンちゃんも大喜びです。
「じゃあ急いであたしの家まで行こう!」
「うん!」
 2人は手に手を取りあって、日之本家へと駆けていきました。

   おしまい

解説 解 説 投稿日: 2006/04/23(日) 14:28:47 ID:39wEsLI9
武家の家紋にまで強くない鳥や動物が多い日本という国は
非常に幸せな国でもあり、危機を知らぬ国でもあると思います。
外国の書籍で目にする敗者や弱者への嘲笑、勝者と敗者の歴然たる扱いの違いには
驚きますが、日本人の方が甘いということでしょう。

端午の節句
http://www.kgef.ac.jp/ksjc/ronbun/930520s.htm
登竜門の由来
http://homepage1.nifty.com/kjf/China-koji/P-222.htm
ポーランド 国の紋章は赤地に白い鷲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89
ワルシャワ市の紋章は人魚です
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF

解説 マンセー名無しさん 投稿日: 2006/04/24(月) 21:40:21 ID:0zMz/2zI
>武家の家紋にまで強くない鳥や動物が多い日本という国は
>非常に幸せな国でもあり、危機を知らぬ国でもあると思います。

貴方は、無知もいいとこです。

日本は神仏に対する信仰が厚い国です。
また、武家は戦いが自然環境の変化や人知を超えたものに
左右されることを知っておりました。
ゆえに、吉兆や頂戴物を大切にします。
その表れが家紋となっております。

それに、武家において動物などは、鎧兜などに反映されております。

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