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第2667話 U-33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2007/02/11(日) 23:45:55 ID:pfFRKaww
『アメリー家の桜』

「さくら、お誕生日おめでとう」
 ケーキを前にパパとママはビール、ニホンちゃんとウヨ君はジュースで乾杯です。
 おいしく頂きながらみんなで楽しく話しているときに、ニホンちゃんがふと聞きました。
「ねえ、私の名前、どうしてさくらとつけたの?」
 パパが答えます。
「それはね、おじいちゃんが、孫が女の子だったら絶対にさくらとつけると決めてたんだよ」
 パパは、そのわけを話してくれました。

 ニッテイさんが若かった頃のある春の日こと、アメリー家の人たちが日ノ本家の前を通りかかり、
何気なく庭に目を向けたのです。その目に飛び込んできたのは満開の桜でした。余りの美しさに
感動した彼らは、ニッテイさんに声をかけて苗木をわけてくれないかと頼みました。
 ニッテイさんは快く引き受け、苦心して苗木を育ててアメリー家の人たちにプレゼントしました。
アメリー家からもお返しにハナミズキの苗が贈られてきました。

 ところがそんな仲のよい両家の間にいつしか暗雲がたちこめるようになり、そしてついに町内を
二分する大喧嘩が始まって、両家は敵味方になってしまったのです。
 大喧嘩は日ノ本家側の敗北で終わり、日ノ本家はアメリー家の支配下に置かれました。それから
しばらくして、ニッテイさんは仲直りの交渉にアメリー家に出向きました。
 居間に通されたニッテイさんは、何気なく庭を眺めました。するとそこには桜の木が一杯に花を
つけていたのです。
「あの大喧嘩の中でも、桜は切り倒されることもなく、春ごとに花を……」
 ニッテイさんは何かを深く感じたようです。

 パパは写真立ての中のニッテイさんの写真を見ながら話を続けました。
「アメリー家から帰ってきたおじいちゃんは、まだパパが結婚しないうちから孫の名前はさくらだ
と言い出してね」
 ニホンちゃんはパパに言いました。
「地球町のみんながもっともっと仲良くなって、いつもまでも春のお花見が続けられるといいね」
 今年も桜の季節は、もうすぐです。

解説 U-33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2007/02/11(日) 23:48:38 ID:pfFRKaww
(解説)
 ニホンちゃんの誕生日は、建国記念の日の2月11日という設定と、第1話が書かれた
7月9日という設定の2通りあるようですが、今回は2月11日で作りました。

 前者だと数えで2667歳、後者だと満で5歳じゃないのかというツッコミはさて置いて、
今回のソースです。

アメリカと日本の友情を深める花
http://www2.osk.3web.ne.jp/%7Earanishi/wcherry.pdf

 昭和13年(1938)に、ポトマック公園に「ジェファ−ソン記念館」を建てることがきまり
358本の桜を切りたおすことになりました。
 このころ、日本は中国にせめこんでいる時でもあって、そのために、アメリカの人たち
の日本への反感が高まっていました。「日本の桜は、ぜんぶ切り倒してしまえ」という人
もいました。
 桜の木は、植えてから二十七年もたっているので、みごとな桜ばかりです。多くの
ワシントンの人びとは切り取ることに反対しました。
 婦人団体の人たちは、桜の木のまわりに手をくんでていこうしました。そのために
記念館建設に八十八本の桜が切りとられただけですみました。

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