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第2766話 EUプロトコルG 投稿日: 2007/06/21(木) 02:16:23 ID:NeLhop0b
【1/6】
「エリザベスとフランソワーズの了承、取り付けたよ〜アーリア」

「そうか。ご苦労だったなマカロニーノ。よくあの難者らを説得できたな」

EU町、ルクセンブルク家の一室。
珍しくマカロニーノ君とアーリアちゃんが親しげ、
と言うよりは真摯な態度で話しています。

「麗しの君のためならお安い御用さ〜。
まああの2人もぶつくさ言ってはいたけど、
最初からコード入力を拒むつもりなんかなかったと思うけどね」

「そうだろうな。仕方がない、という言い方は嫌いだがEU町の未来のためには、
どうしてもここでお互いの妥協点を確認しておかねば、先へは進めない。
その明文化のための『EUプロトコルG』なのだからな」

「未来?妥協?なんだか言ってることがいつもの君らしくないね。アーリア」

「・・・兄上がそう言っていたのだ・・・」
【2/6】
そう言うアーリアちゃんの口調に妙なトゲがあるのをマカロニーノ君は
敏感に感じ取りましたが、口に出しては何も言いませんでした。

「ゲルマッハか・・・、まあ今回の『EU.P.G.』合意に
一番尽力したのは間違いなく彼だろうね」

「そう思ってくれるのが例えお前だけだったとしても、私は嬉しい」

いつも「イタ公」と呼んで蔑んでいるマカロニーノ君に対して、
アーリアちゃんはまっすぐな朗らかな笑みを向けます。

『EUプロトコルG』・・・、それは『メイドロボEU』専用の最新情報フォーマット。
以前からその草案が出されてはいましたが、そのコンテンツの必要性を巡って議論が紛糾し、
EU会議での採決にこぎつけることはありませんでした。
しかしゲルマン家ではこの『プロトコル』の製作・導入に並々ならぬ熱意を以って取り組んでいて、
各家の交渉、説得に当たってきたのです。つまりアーリアちゃんにとっては、
『EU.P.G.』の導入は一族の名誉がかかる一大プロジェクトなのです。
【3/6】
(だのに・・・なのに・・・)
(マカロニーノでさえここまで協力的だというのに・・・)
(あの女は・・・兄上を困らせて・・・)

「それでアーリア。君の兄上はどこだい?彼ともいくつか
確認しておきたいことがあるんだけども」

「兄上もお前と同じに、説得工作に行ってもらっている」

「フーン。彼自ら?誰に?」

「・・・ポーラだ」

ため息が漏れるようにその名を呟いたアーリアちゃんは、
イラ立っているような、あるいは何かを疑うような、複雑な顔を浮かべました。
彼女の表情に気付いたマカロニーノ君、何か思う所がありそうでしたが、
またしても口には出しては何も言いませんでした。
【4/6】
「決心してくれないか?ポーラ。もう後は君のコードだけなのだが」

「私イヤよ。そんなんじゃ納得できない。『EU』は
ゲルマッハ君ちやフランソワーズ家だけのものじゃないのに」

「無論だ。EU会の皆の為にあのロボットは存在する」

「でもあのコンテンツじゃ、えっと・・・例えばウチみたいな
小さい家は自由に使えない、そうじゃないの?」

「初期の運用に関してはその方が良いと判断した。皆もそれで納得してくれた」

ゲルマッハ君は、ひとつひとつ言葉を選んではポーラちゃんを
諭(さと)そうとしますが、どうも結果は芳しくないようです。

大きな家が管理を独占するようなシステムを促すことになる
今回のバージョンアップには元々反論も多かったのも事実ですが、
これまでずっと「大きな家」に振り回されてきた経験のあるポーラちゃんには、
そういった考え方に拒絶感があるのかも知れません。
【5/6】
やや沈黙があり、やがてゲルマッハ君がやや遠慮がちに口を開きます。

「もしかして、とは思うが、まさかアメリーに何か言われ・・・」

その言葉を最後まで言うことは出来ませんでした。
ポーラちゃんの顔が彼女の髪よりも赤くなり、鬼のような表情でゲルマッハ君を睨み付けます。

「・・・ひどい・・・ゲルマッハ君・・・私のこと・・・そんな風に・・・」

ポーラちゃんの顔は次第に俯き、その目には涙が浮かび始めました。

「す、すまない。確かに今のは私の節義を欠いた失言だった。
許してくれポーラ。君への無礼な振る舞いを謝罪する」

「・・・・・・」

ポーラちゃん、泣き止んでくれたようです。
さしものゲルマッハ君もホッとしたようです。
【6/6】
「では、この話の続きは、来週のベルギー家で」

「うん。絶対・・・行くからね」

まだ目元が赤いままのポーラちゃん。はにかみながら答えます。
ゲルマッハ君。とりあえず今日の説得は持ち越すことにしたようです。
立ち去る彼の後ろ姿にポーラちゃんは呟きます。

「・・・ごめんね・・・ゲルマッハ君・・・でも・・・私、やっぱり、まだ・・・」

そんな2人を遠くから見つめる影があります。いつの間にか来ていたマカロニーノ君です。

「まったくあんなマッドメガネのどこがいいのやら・・・」

さて、果たして「EUプロトコルG」は導入されるのでしょうか。

解説 マンセー名無しさん 投稿日: 2007/06/21(木) 04:53:17 ID:NeLhop0b
【解説】
ソースはEU憲法条約の修正協議にポーランドが反対を表明したニュース
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070620AT2M2000120062007.html
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/32675.html

・・・なのですが、イラストコーナーで見たkareki氏のマンガから特にイメージを膨らませました。

16日のTVで細木数子が捕鯨について論じていました。
「ほどほどは獲らなくてはバランスが悪い」、「互いの食文化の尊重が必要」という主旨で、
好感が持てました。個人的には細木女史は好きではないですが。

リュック・ベッソンは捕鯨に批判的は意見を出しました。
http://www.daily.co.jp/gossip/2007/06/14/0000386381.shtml
調査捕鯨の意義を知って欲しいです。個人的にはベッソンの映画は好きなのですが。

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