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第100話
どぜう
投稿日: 2003/08/20(水) 18:07 ID:JHZLLAGQ
「おばあさんの猫」
そのおばあさんは猫を待っていました。
とてもかわいらしい猫。おばあさんの自慢の猫でした。
けれどある日、猫がいなくなってしまいました。
おばあさんはとても悲しみ、あちこちを捜し回りました。
雨に打たれて震えてはいないか、
どこかで怪我をしてはいないか、
怖がってはいないか、心配は募るばかりです。
「帰って来て」その一心でおばあさんは猫の持ち物一つ一つを丁寧に掃除し、
部屋をいなくなった日のままにしていました。
そして、長い、とても長い時間が過ぎたのです。
突然の報せがおばあさんの元へ届きました。
長い間探していた猫が見つかったのです。
おばあさんは喜び、猫を再び家に迎え入れました。
艶やかだった毛並みはほつれたようになっています。
柔らかなおなかは肋骨が浮いて、痩せていました。
怯えるように辺りを見回しています。
けれど、確かにあの日いなくなった、おばあさんの猫でした。
おばあさんの懐の中で、猫がようやく安心したように、
「にゃあ」
と鳴きました。
「おばあさんの猫」
けれど、おばあさんと猫が家で一緒にすごせたのはたった一日だけでした。
雨の日も、風の日も。
暑い日も、寒い日も。
毎日毎日探し回ったので、おばあさんはとても疲れてしまっていたのです。
猫は毎日病室の窓に現れます。
おばあさんは嬉しそうに猫とお話をします。
猫を連れ去った心ない人の元で、猫の子がいることを知りました。
もうしばらく頑張ろう、仔猫が帰ってくるまで、あと少しだけ。
けれど、おばあさんは眠り続ける日が多くなり、
そして、目を覚ますことはなくなりました。
猫はもう病室を訪ねることはありません。
おばあさんが暮らしていた家を守るように、
縁側で日なたぼっこをしています。
ざっざっざっざっ、
竹ぼうきで、近所の女の子が庭を掃いています。
おばあさんが生きていたときのままに、
綺麗に掃除をしてくれます。
「いっしょに頑張ろうね、あなたの仔猫ちゃんが帰ってくるまで、ね」
掃除の手を休め、その女の子が猫の頭を撫でました。
この手は暖かい。猫はそんなことを考えました。
おばあさんの手とは違います。幼い、柔らかい手。
けれど、同じ温かさがその手にはありました。
「おばあさんの猫」
「姉さん、僕も手伝うよ」
「うん…お茶の間の方、お願い出来る?」
男の子の後ろから女の子の声が聞こえました。
「私も来たぞ、役立てることはないか?」
「私も…いい?」
「アーリアちゃん?ポーラちゃんまで…?」
…
子供たちのやり取りを見ながら、猫はふと空を見上げました。
秋の色が混じり始めた空。秋茜が舞い始めた空。
「そ、それは捨てちゃ駄目なのー!!」
「うあ、そうか、すまないニホン」
「ペットボトルのキャップは外すんだっけ?」
「あ、外してください、キャップは燃えないゴミ、だっけ、姉さん?」
そう、おばあさん。
この家もあの頃と同じくらい、きっとにぎやかになる。
あの頃よりも、もっとにぎやかな家になる。
「ごめんねー、人が増えたけど手際悪くなっちゃったよぉ(泣)」
最初に庭を掃除していた女の子が猫に話しかけました。
「にゃあ」
まぶしそうに目を細めながら、猫は鳴きました。
解説
どぜう
投稿日: 2003/08/20(水) 18:09 ID:JHZLLAGQ
どぜうです。
奥土シズエさんのご冥福を心からお祈りいたします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030819-00000314-yom-soci
思うまま書き散らしてしまったので穴があるかもしれませぬ。
ラスト近くでポーラちゃんとアーリアちゃんが出てくるのは、
ここら辺のニュースソースからヒントを得ました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030818-00000379-jij-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030820-00000105-mai-pol
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