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第24話 雉虎 ◆KIJIcyP2 投稿日: 2003/01/09(木) 18:29 ID:O1qNSNN6
getrennt zwei Leute. (引き離されたふたり)

ナッチ叔父さんが自殺して数日後・・・僕らはこの世に生を受けた。
そう、双子の兄弟として。
僕が生まれた時、僕の家はガタガタだった。
第二次町内大喧嘩でナッチ叔父さんは多くの家を相手取り
派手に暴れたらしい。
でもその代償は大きかった。
一時は、ユーロ町・・・当時はヨーロッパ町と名乗っていたが
かなりの優雅さを誇っていたらしい。
でも僕はそんな昔の事は知らない。
僕が知っているのは、僕が生まれた後の廃墟に等しい家だけだ。
僕がまだ幼い頃は、フランソワーズ家とエリザベス家の
ちゃーちる叔父さんそしてアメリー家のとるーまん叔父さんが
親代わりだった。
妹のアーリアには、ロシアノビッチ家のスターリン叔父さんが
親代わりとなった。
僕らは双子だし、顔も良く似ていてたので服を取り替え親代わりの
叔父さん達をからからかったり、二人で郊外へ出かけたりもした。
兎に角、僕らはいつも一緒だった。
あの日までは・・・
それまでは僕らは部屋を自由に行き交いしていた。
その日は、僕とアーリアは僕の部屋で遊んでいた。
僕の部屋は、アメリー家のとるーまん叔父さんがいろいろなおもちゃを
くれたので子供だったアーリアにはたぶん宝箱に思えたのだろう。
アーリアは自分の部屋より僕の部屋に居る方を好んだ。
「あ〜、あにうえはいいなぁ・・・おもちゃがいっぱい・・・」
僕は、ふとアーリアの部屋の閑散した風景を思い出した。
「すたーりん叔父さんはおもちゃをくれないのか?アーリア」
すると、アーリアは身を強張らせた。
あの時のアーリアの表情は今も覚えている。
「アーリア・・・すたーりん叔父さん・・・怖い・・・おもちゃなんか
一度も貰った事無いし・・・すぐに・・・打つから・・・」
僕はショックだった。
僕はとるーまん叔父さんやちゃーちる叔父さんから変わったあとりー叔父さん
にも一度も打たれた事は無い。
困った事があっても話せばキチンと話し合ってくれるからだった。
そんな僕の甘やかされた生活と幼い浅慮があんな悲劇を生むなんて
思いもしなかった。
「アーリア、大丈夫だよ。すたーりん叔父さんだってちゃんと話せば解って
くれるよ」
アーリアは少し考え込むとパッ明るい笑顔を僕に向け言った。
「うん、あにうえの言うとおりだと思うね。ちゃんとお話してみるね。」
それが僕が最後に見たアーリアの明るい笑顔だった。
その夜の事だ。
隣りのアーリアの部屋から僕はアーリアの悲鳴とすたーりん叔父さんの罵声
そして・・・何かを叩く音を聞いた。
バシッ!バシッ!バシッ!
「ご、ごめんなさい!すたーりんおじさん!やめて!」
僕は驚き、ベットから飛び抜け、そっとドアを開けた。
そしてそのドアの隙間から見た光景は忘れようにも忘れられない。
すたーりん叔父さんが杖でアーリアを殴っていた。
何度も・・・何度も・・・
「この!馬鹿者がぁ!西の小僧に誑かせられたのか!この恩知らずめが!」
バシッ!バシッ!バシッ!
アーリアは体を丸くし、打ちのめされていた。
そのアーリアの小さな体には行く筋のも赤い血の筋が出来ていた。
僕は、怖かった。
その光景が、アーリアの血が・・・そしてすたーりん叔父さんが・・・
僕は、慌ててドアを閉め、ベットに飛び込むと体を丸めて震えるしかなかった。
でも、音と声はまだ聞こえてくる。
「よいか!西の小僧とお前ではすべてが違うのだ!主義も理想もすべてがだ!わかったか!」
バシッ!バシッ!バシッ!
「ご・・めん・・な・・・さい・・」
僕は何か凄い悪い夢を見ているような気分だった。
そこから抜け出したかった。
すべてから逃げ出したかった。
だから、僕は耳を手で塞ぎ、瞼をぎゅっと閉じた。
そして、そのまま眠ったんだ。
翌日、僕は眼を覚ますと昨夜の出来事を思い出した。
夢だと思いたかった。
凄い悪い夢だと思いたかった。
僕はベットから飛び起きアーリアの部屋に向かった。
そこにはきっとアーリアがとびっきりの笑顔で迎えてくれると思った。
あのいつもの笑顔で・・・
でも僕は部屋を出ると愕然とした。
昨夜の事は、夢なんかじゃない事を知った。
何故なら
僕の部屋とアーリアの部屋の間には長い壁が出来ていたのだから・・・
まだ幼かった僕の身長では壁の向こう側さえ見えず、向こうからは何の音も聞こえない。
僕は必死に壁を叩いたんだ。
「アーリア!アーリア!お願い返事して!・・・アーリアァァァ!」
壁の向こうから何も返事も無い・・・物音一つしない。
僕はあのまま、アーリアが殴り殺されてしまったのかと思った。
その時、かすかな声が聞こえたんだ。
「あ、に、う、え・・・痛いよぉ・・・」
壁の向こうから聞こえるかすれた声を聞くと僕は涙が溢れ出したんだ。
僕は大声で泣きじゃくりながらアーリアに言ったんだ。
「ごめん!ごめんよ!アーリア!僕の所為だ!僕の所為なんだ!」
アーリアからの返事は聞こえない。
「僕が悪いんだ。僕が余計な事を言ったから・・・僕に力が無かったから
ごめん!ごめんよ!アーリア!」
僕はその時、何時間も泣いていた。
泣きながらその壁を叩いていたんだ。
自分の無知と無力と孤独感を壁にぶつけていたんだ。
僕の両手は真っ赤に血に染まっていた。
ズキズキと疼くその痛みを僕はアーリアの受けた痛みと思ったんだ。
僕らは双子だから・・・痛みも悲しみも同じようにと・・・

そして、僕はその時に誓ったんだ。
必ず、アーリアを取り戻すって。
その為に、力を得るんだって。
また昔に戻れるように・・・・

そう、誓ったんだ。

der traurige dauert Geschichte (この悲哀の物語は続く)

解説 雉虎 ◆KIJIcyP2 投稿日: 2003/01/09(木) 18:31 ID:O1qNSNN6
ご機嫌様でございます。雉虎でございます。
前回、ゲルマッハとアーリアを動かしてみまして
ちょっとこの兄弟の経緯なんぞを書いてみたくなりました。
ですんで今回は、ゲルマッハ君の語り部調で書かさせていただきました。
そもそも、IRCの方でゲルアリの萌え話をなんて話から始まったのですが
とんでもございません。萌えるどころか・・・
アーリアファンの方、申し訳ございませんでした。

一応、次回で完結を予定しておりますが、ちょこっと予告なんぞ・・・
次回は時が数年経ち、ゲルマッハ君とアーリアちゃんは
コクレン幼稚園で再会致します。
そこでゲルマッハ君が見たものとはいったい!・・・

すいません、予告にもなってませんね。^^;)
なるべく、早く仕上げるようには努力しますんで
お見捨てなきように・・・

それでは!
auf ein baldiges Wiedersehen anstosen!

資料
ttp://www004.upp.so-net.ne.jp/s-zerocoro/grmny.htm
ttp://www007.upp.so-net.ne.jp/togo/index.html
ttp://133.1.179.17:591/WadokuJT/default.htm
ttp://www5.mediagalaxy.co.jp/sanshushadj/

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