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第52話 熱血君 ◆x3A1GrPw 投稿日: 2004/01/23(金) 07:-18 ID:Gd9ek1FE
         「ホワイトクリスマス〜人は愛を紡いで生きるのだから〜」
「このユグドラシルはね、何時か燃えて倒れる宿命にあると言われているんだ」
「この木が……」
 ノーベル君の言葉にニホンちゃんは木を見上げました。
「ラグナロク。神々の黄昏は知っているかな」
「ええ。名前だけは」
 ニホンちゃんはその話を知っていました。ゲルマッハ君やアーリアちゃんに教えてもらっていた
のです。
「光の神バルドルが死んだ後神々と巨人達の最後の戦いが始まる。その時炎の巨人の長がその手に
持つ炎の剣を大地に放り投げるんだ」
 ノーベル君は木を見上げながら話を続けます。
「そしてその炎は全てを焼き尽くすんだ。そう、何もかもね」
「その中には当然このユグラドシルもあるわ。この木は紅蓮の炎に包まれて消えてしまうと言われて
いるわ」
 フィンランちゃんが続けて言いました。それは壮大なカタストロフィです。 
「それがラグナロク。全てが終わる破局の時。そして何もかもが無くなってしまうんだ。この
町もね」
 ノーベル君は悲しそうに言いました。彼は今の町のあり方に絶望しているのでしょうか。
 確かに今この町には、学校には多くの問題があります。大きい家は威張り散らし小さい家を脅かし
ています。それに事大して生きている家もあります。ゴミやエネルギー、沢山いる町の人達と
これからを考えると不安な事だらけです。
 ここでニホンちゃんは口を開きました。そしてそこにいる三人に言いました。
「けれどその炎の後何も残っていないわけじゃないわ。人は復活するじゃない」
 ニホンちゃんは穏やかな笑みを讃えて言いました。彼女もその話は知っているのです。
「確かに神様も巨人達も皆死んじゃったけれど私達は復活して、しかもその手には
大切なものが残っているでしょ」
「えっ、それは……」
 三人はニホンちゃんの方を見て言いました。
「それは愛よ。愛がこの世界に残ったのでしょ」
「それは……」
 三人は口ごもりました。ニホンちゃんはさらに話を続けます。
「たとえ全てが焼かれても人の心までは焼き尽くせないわ。愛は全てを燃やし尽くす
炎の剣でも滅ぼす事は出来ないわよ」
「うん………」
 その言葉に皆頷きました。
「ノーベル君の言いたい事はわかってるわ。確かに今もこの町は問題だらけよ。嫌な事
なんて探せばいくらでもあるわ。けれどね」
 ニホンちゃんは微笑みました。 
「諦めたり絶望してたら何も進歩しないし良くならないと思うよ。人を信用出来なくなったり
愛せなくなったらそれでお終いでしょ」
「うん……」
 ノーベル君と紫苑ちゃんは顔を見合わせました。紫苑ちゃんを助けてくれたノーベル君の家の
人も、ニホンちゃんの家の人も愛を忘れなかったからそうしたのです。
「大丈夫、皆愛を忘れなかったらどんな困難でも乗り切れるわ。だってそうじゃなかったら
私も皆もここにはいないしこの木だってここにはないでしょ」
「うん」
 皆頷きました。彼等が今ここにこうしているのも彼等の家の人達の愛があるからこそなのです。
それは皆わかっていました。
「けれど皆は……」
 それでも不安は消えません。フィンランちゃんがまだ反論しようとしたその時です。
 皆?今来たわよ」
 ニホンちゃんが上を見上げました。
「えっ……?」
 三人がそれにつられて上を見上げました。そこではサンタさんの橇が飛んでいました。
 橇は数え切れない程ありました。そしてそこから飛び降りてくる子供達。皆赤と白のサンタの
服装です。
お待たせ、お土産は鼠のオモチャとハンバーガー持って来たぜ!」
「陶器をプレゼントアル。あとお茶を持ってきたアルぞ」
「俺は酒……じゃまずいからマトリョーシカ。まあたまにはこんな小さいのもいいだろ」
「わたくしはクッキーを焼いてきましたわよ」
「エリザベスはそれしか美味くできませんからね。わたくしはフルコースですわよ」
「ニホンちゃん、点心一杯持って来たからね!」
「私はソーセージだ。あと兄上に教えてもらったケーキだ」
「僕はベーコン。あとザッハトルテだ」
「わたしは生春巻き」 
「僕はトムヤンクン。どうやって持って来たかは聞かないでね」
「あたしはジャワティー持って来たわよ」
「カレー」
「タコス」
「砂糖。あとキューバ家特産の葉巻・・・・・・じゃなくてグレープフルーツ」
「ワスは……羊肉の塊ダス!」
「わたしはそれ使って料理する役。シシケバブは……合わないかな」
「僕はパスタ。あとワインもこっそりと」
「たまには僕も忘れないでね。シロップ持って来たよ」
「姉さん、忘れ物。ケーキとお菓子だよ」
「ウリを忘れるなニダ!ウリはキムチを持って来たニダ!ついでにクリスマスカードを
皆にやるニダ!今年は十二支、感謝しる!」
「兄さん、何でキムチから離れられないニカ。しかも十二支とクリスマスがどう関係あるニカ」
 皆背中の袋を取り出して見せます。早速パーティの始まりです。
 朗らかなパーティの中ノーベル君はニホンちゃんの側に来ました。
「あの、ニホンちゃん」
「何?」
 ニホンちゃんは優しい笑みを向けてきます。
「あの、さっきはあんな暗い事言って御免ね。最近僕落ち込み易くて」
「いいのよ。私だってそうだし。それより見て」
 皆を指差して言いました。
「あ……」
 そこにはサンタの服を着て笑っている皆がいます。普段はあんなにいざこざが
耐えない皆が一緒になって笑っています。カンコ君もファビョーーンせずに妹の
側で笑っています。
「あいつまで……っていうか妹には滅茶苦茶優しいんだな」
「確かに皆色々あるけれどね。それは少しずつ一つずつ解決していけばいいよ。
そうしたら今みたいに皆笑っていられるようになる筈だから」
「うん!」
 その時サンタさんが上から雪を降らせました。
「雪……久し振りに見るわ」
 紫苑ちゃんがその結晶を手の平に乗せて言いました。
「じゃあうちにおいでよ。飽きる位見せてあげるから」
 フィンランちゃんが彼女に言いました。
「フフ、そうさせてもらおうかしら」
 紫苑ちゃんはその言葉に微笑みました。雪と世界樹のイルミネーションが皆を
祝福し、飾る中皆はその場に楽しく潰れ皆で眠りに入るまで世界樹と共に、そして
その優しい木の下で笑い合い宴を楽しみました。
  
                   Merry Christmas!

解説 熱血君 ◆x3A1GrPw 投稿日: 2004/01/23(金) 07:-9 ID:Gd9ek1FE
 今回実は『木枯らしに抱かれて』の続編でもあります。あのまま紫苑ちゃんを
泣いたままにしておくのも可哀想ですし。そして無銘仁さんの作品に影響を受けました。
18クールであった焚火か何かしているニホンちゃん家に皆が来る話。ちょっと記憶
があやふやですが。無銘仁さん間違っていたらすいません。それにしてもイラク君と
キッチョム君には笑わせてもらいました。
 ナホトカさんの作品は何か百話位の時思い出していいです。どんどん書いて下さい。
 ap−proさんの作品は是非続きを。期待しています。
 最後に。もう新年で一月も終わりですが細かいご指摘はご勘弁。クリスマスを祝いましょう。

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