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第66話 有閑工房 ◆aKOSQONw 投稿日: 2004/02/23(月) 11:45 ID:IpnwcT2g
『Kyrie Eleison Mardi Gras』

 その女に会ったのは、遅い夕食を取りに近くのパブに行った帰りだった。
 傘が嫌いなので雨の日はいつもずぶぬれを覚悟しなければならなかったが、店を出たときは幸いに小降りだった。
 水銀灯に照らされた歩道は鈍く濡れて光り、薄汚れた町の空気が幾分かまともになった気にさせてくれる。勿論、たかが雨で世の中が良くなるのなら、世界はきっと綺麗になりすぎて全ての人間にとって住みにくいことこの上なくなるだろう。
「あら、雨の夜にハイエナなんて乙なものね。」
 人気のない交差点に立っている人影から、こんな風に挨拶を受けた。夜に黒ずくめの女から声をかけられるのもなかなか乙なものだ。コートのポケットからフィルターの千切れかけたタバコを取り出すと、火をつけて俺は尋ねた。
「どこかで葬式でもあったのか。」
「葬式のない日が、この地上にあるかしら。」
「ないね。」
 女はゆっくりこっちに近付く。逆十字のネックレスが似合いすぎていた。
「残念ながら、今のところ呪い殺してほしいやつなんかいないんだが。」
「気にしないで、通りかかっただけだから。」
 そう言うとハイチは曖昧に笑う。普通の奴なら夜中にこんな会話を交わしただけで呪殺の恐怖に囚われるだろう。俺がどうだっていいと思い、恐怖も何も感じないのは単に慣れているだけだ。勿論、こうなる前にそれなりの経験を積んでいるからだ。呪い以外で。
「今度死神にでも会ったら、俺が用があると伝えておいてくれ。」
「そうね…」
 ハイチはイエスともノーとも言わず再びゆっくりと歩き始める。すれ違いざまに甘い香の匂いがした。ただし、間違いなく化粧はしていない。
「あなたが生き永らえるのが、誰かさんの呪いかもね。」
 背中に相変わらずの調子で単調な声が届く。
「死に場所が見つからないのはそのせいかもな。」
「そうね。もう行かなきゃ。」
「ああ。」
 俺も再び歩き始める。道端のニューススタンドでタブロイド誌を取り、眠そうな黒人に小銭を突き出す。
 一面に踊る記事は名前ばかり売れて実力のない女優のスキャンダル記事だった。こんないつ消えるか判らない奴が一面なら、内容は推して知るべしだ。
 事務所の入っている雑居ビルの入口で、大家の郵便受けにタブロイド誌を突っ込むと、俺は階段を登り始めた。

FIN

解説・深夜・背後に注意(w
※ 特に何の必然性も意味もなく飴とハイチの交錯をば。何しに行くんでしょうねハイチちゃん。七升さんのイラストに触発されて登場したとかしないとか、雨の夜の街角にこんなんいたらマジ怖いよね?ね?という単なる受け狙いだったりなかったりです。
※ タイトルは、『Kyrie Eleison Mardi Gras』 Electric Prunes/OST from EASY RIDER
映画イージーライダーのサントラより。しかし、見よう見ようと思いつつ映画は見たことなく、おまけにこいつらの他の曲は知らず、あまつMardi Gras が何のことか調べるまで知らなかったという…

さ、首吊ってこーよおっと。
うわっ!改行忘れ。ナサケナヤ。

一、至誠に悖るなかりしか。 (-_-;)l
一、言行に恥じるなかりしか。 (T_T)
一、気力に欠くるなかりしか。 _| ̄|○l|l
一、努力に憾むなかりしか。 _| ̄|○l|l
一、不精に亘るなかりしか。 _| ̄|○l|l_| ̄|○l|l
ウリは海軍さんにはなれんな。そもそも原因はニッ(Tbs

本刷れ>>412さん レスサンクスです
>>781 ナナッシィさん
おひさしぶりどすえ。感想乙です。ナナッシィさんの次回作も
期待しとります。←おねだり

しばらく人様の感想控えますね。作品書くのがやっとなもので…

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