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第6話 24 投稿日:  2005/06/08(水) 23:38:59 [ PIKSP9Vw ]

闇の中でいくつもの小さな明かりがついたり消えたりしています。
はかなげな光は時に静止し、また舞い上がって見る者をふしぎな夢の世界に誘います。
ここはニホン家のお庭。
今年も蛍の季節がやってきたのです。
「わあきれい」
ラスカちゃんが歓声をあげます。
北国育ちのラスカちゃんにとって、淡く光りながら舞う蛍はとても珍しい光景です。
「ねえ知ってる」
ニホンちゃんが話しかけます。
「蛍ってね、ふるさとに帰ってきた亡くなった人の魂だっていう言い伝えがあるの」
「ふーん、なんだかロマンチックなお話ね」
「ニホンのおうちの蛍はね、ニホン家のご先祖様たちが、みんな仲良くしてるかな、元気にしてるかなって見守って……」
不意にニホンちゃんの言葉がとぎれます。
ラスカちゃんがふり向くとニホンちゃんのほほに涙が一筋光っています。
「どうしたの」
「ごめんなさい。何でもないの。心配しないで」
「そう、何か悲しいことでもあったのかと思って」
「ありがとう。ラスカはやさしい子ね。
ねえ、亡くなった人たちって、だれもみんなかけがえのない人たちだよね。
子供たちや孫たちのために、いいニホン家にしようと一生けんめいがんばってくれたんだよね。
中には近所ともめごとをおこした人もいたかもしれない。でもね、だからこの蛍はおうちに帰ってきちゃいけませんなんて言ったらおかしいよね。
見て、どの蛍だってみんな同じように光ってる」
「また例の連中かあ」
毎年夏になると、ニホン家とご近所がお墓参りのことでゴタゴタすることをラスカちゃんは思い出しました。
「それはなれっこよ。でも、家の中にもそんなことをいう人がいるの。ニホン家の人なのによその家の人たちといっしょになって騒いでいるの。そのことを思い出したら、つい悲しくなって」
「どこのうちでも、いろいろとたいへんなのね。でも元気を出して。悲しそうなニホンちゃんなんて見たくない」
「うん」
ニホンちゃんはにっこりうなずきました。そして二人はいつまでも蛍が舞い飛ぶのをながめていました。

解説 24 投稿日:  2005/06/09(木) 00:02:06 [ wdu9KdbQ ]

お目汚し失礼いたします。
調子に乗って再度お邪魔させていただきます。
欠点は自分じゃ分からないので、よろしかったら皆様に批評していただけたら幸いです。
時事ネタではありますが、自分としてはむしろ季節ネタを書きたかったというのがほんとのところです。
実は「美少女の涙」を書きたかっただけなんじゃないかとツッコまれると、なんとお答えしていいかわからないんですが。

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