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第21話 貼り逃げ男 投稿日: 2006/01/29(日) 21:29:05 ID:P9tTTylr
「覇者の葛藤」

放課後の黄昏時、公園でベンチに座るニホンちゃん。
空が一面あかね色に染まる中、下界に佇む一輪の華はとても絵になります。

ニホン「変わり往くきせ〜つが〜、町並み染めて〜往く〜♪」

ニホンちゃん、今日はとてもご機嫌です。
この頃の彼女は僅かではありますが、日ノ本家で自分の意見を言える様になりました。
それもこれも、最近日ノ本家を仕切っている人達がしっかりしてきたお陰なのです。
メッキリと強くなっていくのが実感となって現れているわけです。

ニホン「(やっぱりお参りしなきゃダメだよ。皆私たちの為にしてくれた事なんだから)」

日ノ本家では、そのご先祖様たちが安らかに眠れるように大きな家を造りました。
近年、チューゴ君とその他が難癖を付けてはニホンちゃんのお参りを妨害してきましたが、
これからはひょっとしたらその妨害に悩まされなくとも良いかも知れないのです。
そして見れば、ニホンちゃんの顔つきもなかなか凛々しくなっています。

ニホン「今度、本家の人も呼んで一緒にお参りしてこよーっと♪」

その時です。ユーロ町の方角からズンズンと足音が。。
その不快な音は、見る見るうちに大きくなっています。

━━━━コッチに来る!?

ニホン「だ…だれぇ???」
エリザベス「日ノ本さん」

エリザベスちゃんでした。ニホンちゃんは「ほぅ。」と一安心しました。…が。

エリザベス「貴女、本家の方に「あの」家に来て頂くように言ったそうですわね?」

何やら高圧的な態度をとるエリザベスちゃん。一体どうしたのでしょうか。
呼び名も「ニホンさん」から「日ノ本さん」に変わっています。

ニホン「え、エリザベスちゃん、どうしたの、そんな…に…」

ニホンちゃん、途中で言葉が止まってしまいました。
エリザベスちゃんの顔を直視したのです。彼女は冷たく、凍りつくような瞳で睨んでいます。

エリザベス「一体どういう事ですの…?…あのような下衆どもが眠る家に赴くなど。
      返答次第では…容赦しませんことよ」

ニホンちゃんは絶句します。普段のエリザベスちゃんからは出ないような、
刺々しい言葉だったからです。
確かにエリザベスちゃんは口が良い方とは言えませんが、
それなりともオブラートに包んで話していた事はニホンちゃんも薄々知っています。
知っていただけに、彼女の侮蔑の篭った話し口調を聞いて、ニホンちゃんは戸惑い気味です。
一昔前の彼女なら、きっと泣いていた事でしょう。

ニホン「エリザベスちゃん、そんな事言ってはダメ」

しかし、潜在的なプライドの高さはアジア町随一とも言われるニホンちゃん、
ご先祖様をバカにされたとあっては黙って引き下がれません。
エリザベス「ダメ?ダメとは心外ですわね。
      貴女の先祖の方々の先の大喧嘩での狼藉な振る舞い、まさか忘れたとは言わせませんわ!」

凄まじい圧迫感。ニホンちゃん、堪らず後ずさりします。

エリザベス「ワタクシのお家を反故にしても飽き足らず、
      終いにはアジア町のワタクシの別荘を乗っ取り、挙句の果てには…!」

ニホン「だ、だってあれは仕方なかったんだもん…ああするしかなかったもん」

エリザベス「ワタクシのあの、あの栄光に満ちたお庭を荒らしておいてよくもまあ…!
      貴女のっ!日ノ本家の人間のせいですのよ!ワタクシの家が番長から転落したのは!」

そう言うと、彼女はありったけの力を込めて右手を振りかぶり、ニホンちゃんに向けました。
ニホンちゃんは避けようとしますが、エリザベスちゃんの方が若干早く…

ピタ。

ニホン「っっっ━━━━━━…へ?」

ニホンちゃんの頬に着地するハズだった平手は、ギリギリの位置で静止していました。
ニホンちゃんが相手の顔を見ると…エリザベスちゃんは俯いています。

エリザベス「…栄光ある家柄のワタクシが嫉妬など…あってはならない事ですわ…
      ましてや淑女たる者が暴力に走るなど…。」

エリザベスちゃん、震える平手をゆっくりと下ろし、途端に踵を返して言います。
エリザベス「日ノ本…いえ、ニホンさん。
      本家の方をお参りに誘うのは辞めて戴きますわ。
      …ええ、今回はいきなり噛付いた私に非があるやも判りませんが、
      今のでもうワタクシは警告いたしましたわ。後は貴女次第。
      ワタクシとこれからも仲良くしたいなら、素直に譲歩なさい。…では、御機嫌よう。」

エリザベスちゃんは力なさ気に公園を去ろうとします。
ニホンちゃんは一瞬呆けた後、目が覚めたように言いました。

ニホン「エリザベスちゃん!
    私もエリザベスちゃんの気持ち、判るよ。
    判るけど…これは、これは私の家の問題…だから…。」

エリザベスちゃんは立ち止まります。明らかに震えていました。

ニホン「けどね、私はエリザベスちゃんと友達でいたい。
    エリザベスちゃんが私の事嫌いになっても、絶対に私は諦めないよ。」

エリザベスちゃんは歩き出します。こちらを振り向きもしません。
━━━━しかし、その時彼女がクスリと笑っていたのを、ニホンちゃんは見逃しませんでした。

ニホン「…神経使ったら何かお腹すいちゃったな。。今日のお夕飯は確か海軍カレーだったっけ。
    いっけない!武士とアサヒちゃんに全部食べられちゃう!!」

夕闇が近づく中、ニホンちゃんは決死の表情で公園を後にしました。

ニホン「…ふふっ」

今日のニホンちゃんはご機嫌です。    

解説 貼り逃げ男 投稿日: 2006/01/29(日) 21:33:33 ID:P9tTTylr
【ソース】
「天皇陛下が靖国参拝なさるのが一番」…麻生外相
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060128i213.htm

麻生外相が天皇陛下に靖国"戦争神社"参拝を要求とBBCが報道
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4658262.stm


陛下がお出ましになられると聞いてこの騒ぎ…影響力の高さを物語ります。
麻生タンが好きです。でも天皇陛下はもっと好きです。

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