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第22話 日出づる処の名無し 投稿日: 2006/01/29(日) 22:24:50 ID:spmXMJlu
「世界で最も危険な男」

地球町駅前のショッピングモール。普段よりちょっぴりおしゃれをしたラスカちゃんが、
周りをきょろきょろと見回しながら、不安そうに歩いています。
本当は香ちゃんやザイちゃんと一緒に来たのですが、お買い物に夢中になっているうちにはぐれてしまい一人ぼっち。
何とかみんなを探そうと一生懸命なのですが、たくさんの人の流れに阻まれてうまくいきません。
そんなところに、冬場のショッピングモールにはちょっと不似合いな学ランに半ズボンの少年を見つけました。

「あっ!ウヨ君!よかったぁ。」
ようやく見知った顔を見つけることができたラスカちゃん。これでどうにか一安心です。
「あれ?どうしたのさ、こんな所で。ラスカちゃんもお買い物?」
「そうだよ。ウヨ君も?」
「うん。ちょっとここに欲しい本が売ってるって聞いたから。」
「一人でお買い物なんて、ウヨ君スゴ〜い。」
「なんだい。自分だって一人じゃないか。変な事言うなあ。」
不思議そうな顔でラスカちゃんを見返すウヨ君。そういえばラスカちゃんは、みんなとはぐれて独りぼっちになっていたのでした。

「ねぇね、私もその買い物に付き合っていいかなぁ?」
「別にいいけど。」
「やったぁ。」
憧れのウヨ君と一緒にショッピング。念願の二人きりでデートの夢がかなって、ラスカちゃんも有頂天の気分。
「ねぇウヨ君。こんな風に二人で並んで歩いてたらみんなどう思うかな?」
「さぁ・・・どうだろう?兄弟とかかな?」
そんなふうに取りとめもない話を続けながら歩いていく2人。
しかし、ウヨ君の対応はどこかなおざりで、一緒にいるラスカちゃんを気にも留めてない様子です。
「そういえば、ウヨ君の欲しい本って何なの?参考書?それとも小説とか?」
「ええとねえ。お、あった!これだよ。」
「えぇ〜なにこれ?マンガじゃない。ウヨ君こんなの読むの?」
「まあマンガといえばマンガだけど、ただのマンガじゃないんだよ。これを読めば今の国際情勢がみんな分かっちゃうんだ。すごいだろ。」
「ふーん。」
「よかったぁ。しかしもう売ってるんだなぁ。予定だとまだ発売してないって聞いたけど。やっぱりあるところにはあるんだなぁ。」

会計を済ませて本屋を出る二人。うれしそうに本を抱えるウヨ君ですが、その隣のラスカちゃんはガッカリです。
「ウフフフフ。この本、ずっと待っていたんだよ。そうだ!ラスカちゃんもこの本読むかい?」
「ううん、その話はもういいよ。」
今まで放って置かれたラスカちゃんが、不機嫌そうに答えます。
「それよりさ。これから私のショッピングに付き合ってくれない?」
「ええっ?これからかい?僕もう家に帰るつもりなんだけどなぁ。この本も早く読みたいし。」
「そんな事言わずにさ。ねぇ。私も付き合ってあげたじゃない。そうだ!一緒に映画でも見に行かない?前から見たい映画あったんだ。」
「映画っていったって、僕そんなお金ないし・・・。それに、僕らだけで行っても見せてもらえないと思うよ。」
「何よ、つまらない!」
「そんな事言ったって・・・仕方ないじゃないか。」
「じゃあ、もう帰るね。」
「そうかい?じゃあ家まで送っていくよ。女の子一人じゃ危ないし・・・」
「私知らない!!」
「ウヨ君なんて大嫌い!」
結局、一人で帰ることにしたラスカちゃん。もう憎いやら悔しいやらでウヨ君のことなんて思い出したくもありません。
「ひどいよ。こんなにかわいい女の子を差し置いて。あんなマンガなんかにお金を使うなら私にパフェのひとつでもおごってくれればいいのに。」
そんなふうに文句を言いながら歩いていると、一人の少年が近づいてきました。

「お嬢ちゃん。もしかしてアメリーの妹さんのラスカちゃんニカ?」
「?、お兄さんだあれ?」
「アメリーのお友達ニダ。ニムもウヨにひどい目にあったニカ?」
「ふん、あんなお子様なんて知らないわ!ショッピングにも付き合ってくれないなんて。」
先ほどまでのことを思い出すとハラワタが煮えくり返るほどの思いです。
「それは酷い事ニダね。良かったらウリがニムのショッピングに付き合ってあげるニダよ。」
「ええっ!本当!だけど、知らない人に付いていったら駄目だって言われてるし・・・。アメリーお兄ちゃんに怒られちゃうよ。」
「そんなことないニダ。こう見えて、ウリとアメリーはブラジャーニダよ。アメリーが怒るはずがないニダ。」
「だけど・・・。」
「それに、ラスカちゃんはウリの事知らなくてもウリはラスカちゃん知ってるニダ。」
「えっ?」
「アメリー家のラスカちゃんといえば有名ニダよ。前もアメリー家の自作映画に出ていたニダ。まるで空から舞い降りた天女のようでとっても可愛らしかったニダ。」
「ホント!?」
「ハリウッドに香港、欧州、日本、インド、世界中の映画全てがそろっているニダ。」
「ここで話すのも何ニダ。ちょっとそこの喫茶店にでも入らないニカ?」
「うん!私行くわ。」
褒められて嬉しくなったラスカちゃんは、何も疑わずについていく事にしました。
「その映画にはこんなエピソードもあるニダよ。実は・・・」
「あの映画のロケ地には前に行ったことがあるニダ。とてもすばらしい風景だったニダ。」
仲良く映画談義に花を咲かせる二人。年上のお兄さんの話は、ラスカちゃんを飽きさせません。
「お兄ちゃん凄い!映画のことなら何でも知ってるみたい。」
「ウェーハッハッハ。もし良ければ今からウリの家で映画を撮るニダ。ラスカちゃん主演でとっても美しく取って見せるニダ。ラスカちゃんもきっと気に入るはずニダ。ウェーハッハッハ。」
「うれしい!」
「そうとなったら善は急げニダ。今すぐウリの家に行って撮影を始めるニダ。」
そのときです。

「コラー!!キッチョムッ!てめぇうちの妹に何してやがるんだ!」

野球の帰りだったのでしょうか、バットを持ったアメリー君が鬼のような形相で二人に迫ってきます。
「ウェッグ、アメリー!ムムム、お嬢さん、申し訳ないが今日はオサラバニダ!また会おう!ニダ。」
「この野郎!金属バットで二度と××出来ないようにボコボコにしてやるっ!まて!待ちやがれ!」
「ちょっと、待ってよぅ。」
ラスカちゃんの前を通り過ぎた一陣のあらし。それは運命の出会いだったのでしょうか。

「ラスカ、大丈夫だったか?キッチョムの奴に何か変な事されなかったか?」
「うん。大丈夫だよ。ジュースおごってもらっただけだよ。」
「いいか、あんな変な奴についてっちゃダメだぞ。」
「でも、あのお兄さんだったら連れて行かれても良いかも・・なんちゃって」
「何を言っているんだ!お前はもう少しで誘拐されるところだったんだ!大体あいつは世界で最も危険な独裁者なんだ。」
「危険な独裁者?」
「そうだ。」
「うふふ、危険な男の人ってス・テ・キ。」
一向に反省してないラスカちゃんなのでした。

おしまい

解説 日出づる処の名無し 投稿日: 2006/01/29(日) 23:52:38 ID:qRxpy5o6
ソースはこれかな?

朝鮮日報 【米ジャーナリスト「一緒にドライブしたい独裁者は金正日」】
ttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/01/29/20060129000001.html
毎年、世界最悪の10大独裁者を発表するフリージャーナリストのデヴィッド・ワルチンスキーが27日、
ワシントンポストとのインタビューで「独裁者のうち、一緒にドライブをしたいのは金正日」と話した。
同氏は「もし、これら独裁者のうち、長時間一緒にドライブするとしたら、誰と行きたいか」という質問に
「身の安全が確実に保障されるのなら、一番目として金正日」と話した。
同氏はその理由として、自身がハリウッドで生まれた映画愛好家で、金総書記も映画収集マニアであるうえ
女優や監督まで拉致して映画を作らせたというだけあって話も弾むだろう、と説明した。

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